TOP > 出版物 > Island Arc > Island Arc 日本語要旨 2006. vol. 15 Issue 4 (December)

Island Arc Vol. 15 Issue 4(December) 日本語要旨

特集号 Thematic Section: The COREF Project: Coral-reef front migration in the RyukyuIslands
井龍 康文


1. An introductory perspective on the COREF Project
Yasufumi Iryu, Hiroki Matsuda, Hidekaki Machiyama, Werner E. Piller, Terrence M. Quinn and Maria Mutti



サンゴ礁堆積物は,熱帯〜亜熱帯浅海域の古環境変化を復元するために有用である.なかでも,サンゴ礁の分布の北限・南限(サンゴ礁前線と呼称する)に位置するサンゴ礁は,第四紀の氷期・間氷期サイクルに関連した気候変化や海水準変動に鋭敏に応答したと考えられる.そこで,我々は,北西大西洋におけるサンゴ礁の分布の北限に位置する琉球列島において,1) サンゴ礁前線の移動の実態,規模,推進メカニズムの解明,2) 第四紀気候変動に対するサンゴ礁の応答の解明,3) 地球表層の炭素循環におけるサンゴ礁の役割の解明を主目的として,陸上掘削および海洋掘削を実施する科学計画であるCOREF計画を立案した.本計画により,1) 琉球列島におけるサンゴ礁の成立時期,2) 氷期における黒潮の流路,3) 炭酸塩岩の初期続成作用における気候や海水準変動の影響も明らかになると期待される.

Key words: coral, Integrated Ocean Drilling Program, International Continental Scientific Drilling Program, limestone, Quaternary, reef, Ryukyu Group, Ryukyu Islands, sealevel


2. Bathymetry, biota and sediments on Hirota Reef, Tane-ga-shima; the northernmost coral reef in the Ryukyu Islands
Emiko Ikeda, Yasufumi Iryu, Kaoru Sugihara, Hideo Ohba and Tsutomu Yamada


種子島広田沖のサンゴ礁(琉球列島における北限のサンゴ礁)の地形,生物相,堆積物
池田恵美子ほか

琉球列島における北限のサンゴ礁が分布する種子島において,島南東部の広田礁の地形,生物相,堆積物を調査した.広田礁の地形は,岸から沖合に向かって,浅礁湖,沖合平坦面,礁縁,礁斜面に区分される.浅礁湖は,岸側凹地とパッチ帯に細分される.沖合礁原は水深が1.7 m前後の平坦面であるが,中琉球や南琉球のサンゴ礁では,これに対応する地形区は,内側礁原,礁嶺,外側礁原に分化しており,内側礁原ならびに外側礁原の水深は平均低潮位潮位にほぼ一致している.この差異の原因として,中琉球や南琉球と比較して,北琉球における後氷期の礁成長が遅く始まったことや礁の成長速度が小さかったことが想定される.広田礁の造礁サンゴ群集は高緯度地域を特徴づける種を含む.一方,海藻群落は熱帯〜亜熱帯種を多く含む.

Key words: algae, coral, coral reef, Ryukyu Islands, Tane-ga-shima

 

3. Paleoenvironmental interpretations of Quaternary reef deposits based on comparisons of selected ten modern and fossil larger foraminifera from the Ryukyu Islands, Japan
Kazuhiko Fujita, Hiroaki Shimoji and Koichi Nagai


琉球列島に産出する現世および化石大型有孔虫10分類群の比較に基づく第四紀サンゴ礁堆積物の古環境解釈
藤田和彦ほか

現世大型有孔虫群集データを用いて,大型有孔虫を含む石灰岩の堆積環境を復元する新たな方法を提案した.まず,琉球列島宮古島西方沖水深200 m以浅から採取された表層堆積物試料を用いて,形態に特徴のある10種類の有孔虫分類群について,遺骸殻 (1-2 mm径) の水深および地形分布を調べた.その結果,特定の粒径を対象としたことで,各分類群の分布範囲は従来報告されていた分布範囲よりも狭くなった.また,10 分類群の在不在データを基にした多変量解析により,異なる堆積環境に対応する4つの群集が識別された.次にこの現世データを基にして,琉球層群の大型有孔虫石灰岩の堆積環境を推定した.化石群集と現世群集のデータを合わせた多変量解析や現世アナログ法の結果,化石群集が堆積した環境は現在の島棚の水深50 -100 m付近に類似することが推定された.この結果は堆積相や生砕物組成から推定された結果と一致する.本研究が提案する古環境推定方法は北西太平洋のサンゴ礁複合体堆積物の古環境を復元する上で有用である.

Key words: larger foraminifera, multivariate analysis, paleoenvironmental analysis, Quaternary, Ruykyu Group


4. Latitudinal changes in larger benthic foraminiferal assemblages in shallow-water reef sediments along the Ryukyu Islands, Japan
Kaoru Sugihara, Naoto Masunaga and Kazuhiko Fijita


琉球列島のサンゴ礁浅海域における大型底生有孔虫群集の緯度変化
杉原 薫ほか

琉球列島内での大型底生有孔虫群集の緯度変化を明らかにするために,石垣 島,久高島と種子島のサンゴ礁礁原堆積物中の大型底生有孔虫の種構成や個体数を明らかにした.石垣島,久高島と種子島では,25,24と13タクサの大型底 棲有孔虫がそれぞれ確認された.Baculogypsina sphaerulata,Neorotalia calcarとAmphystegina spp.は全島で卓越してみられたが,石垣島と久高島で普通にみられたCalcarina gaudichaudiiを含むCalcarina 属数種は,種子島は全くみられなかった.これらの結果は,緯度の増加に伴う表層海水温の低下などを原因とする各タクサの生息北限の違いを反映していると考えられる.

Key words: biogeography, coral reefs, larger foraminifera, latitudinal changes, Ryukyu Islands, taxonomic composition


5. Culture-dependent and _independent analyses of subsurface microbial communities in oil-bearing strata of the Sagara oil reservoir
Keiichi Sasaki, Akio Omura, Tetsuo Miwa, Yoshihiro Tsuji, Hiroki Matsuda, Toru Nakamori Yasufumi Iryu, Tsutomu Yamada, Yuri Sato and Hiroshi b

南西諸島伊良部島西方沖の島棚縁下に発達する低海水準期サンゴ礁の230Th/234Uおよび14C年代測定
佐々木圭一ほか

 琉球諸島伊良部島西方沖の島棚縁下から地震波探査によって発見されたマウンド状地形の地質と成因を明らかにするために,水深118.2mで海底掘削が行われた.回収された試料に造礁サンゴと石灰藻からなるバウンドストーンが含まれることから,マウンド状地形が小規模ながらサンゴ礁であることが判明した.そしてαスペクトル230Th/234Uおよび加速器質量分析計14C年代測定により,このサンゴ礁が30.5〜22.2kaの低海水準期に形成されたことが明らかになった.以上の結果は,琉球列島のような西太平洋亜熱帯域にも,最終氷期最盛期にサンゴ礁が発達したことを示す.また,低Mg方解石セメントが形成されていることから,サンゴ礁が離水した可能性がある.これは,当時の海水準が現在より少なくとも126m低下したことを意味する.

Key words: coral reef, last glacial maximum, Ryukyu Islands, sealevel, U-series dating

 

6. Characterization of magnetic particles and magnetostratigraphic dating of shallow-water carbonates in the Ryukyu Islands, Northwestern Pacific
Saburo Sakai and Mayumi Jige


北西太平洋,琉球列島に分布する第四系浅海性炭酸塩堆積物に含まれる磁性粒子の特定と古地磁気年代
坂井三郎,地下まゆみ

琉球列島に分布する第四系浅海性炭酸塩堆積物(琉球層群)の形成年代を推定するために,透過型電子顕微鏡による磁性粒子の観察と古地磁気年代測定を行った.琉球層群に含まれる磁性粒子は,主に磁鉄鉱/磁赤鉄鉱からなる単磁区粒子(40-140 nm)で構成されており,その形態と粒子サイズは磁性バクテリアを起源とする磁鉄鉱の特長を示した.透過型電子顕微鏡下では多磁区粒子は認められなかった.これらの結果から,琉球層群中には磁性バクテリアが遍在し,その磁鉄鉱/磁赤鉄鉱粒子が残留磁化の担い手であることが明らかとなった.古地磁気層序を適用した結果,琉球層群はハラミロサブクロンを含んでおり,本研究で解析した琉球層群の形成開始時期は,グレートバリアリーフの形成開始時期(ブルーン期以降)とは異なっている.

Key words: biogenic magnetite, magnetostratigraphy, Pleistocene, Ryukyu Islands, shallow-water carbonates

 

7. Floral changes in calcareous nannofossils and their paleoceanographic significance in the equatorial Pacific Ocean during the last 500,000 years
Shun Chiyonobu, Tokiyuki Sato, Reika Narikiyo and Makoto Yamasaki

石灰質ナンノ化石から見た赤道太平洋地域過去50万年間の古海洋
千代延 俊ほか

赤道太平洋地域の第四紀後期の古海洋環境を明らかにするために,東西赤道太平洋に位置するODP Hole 807AとODP Hole 846Bの石灰質ナンノ化石群集解析を行った.調査結果はいずれのHoleも約20-30万年前を境に石灰質ナンノプランクトン生産量および小型のコッコリスの相対頻度がいずれも減少するのに対し,し暖流系種および下部透光帯種の相対頻度が増加する傾向を示した.これは赤道太平洋域の湧昇流強度弱体化が 20-30万年前に発生したことを示唆している.またHole 807Aでのより顕著な暖流系種相対頻度の増加は,西赤道太平洋地域でWPWPがより拡大したことを示す.

Key words: calcareous nannofossil, latest Quaternary, paleoceanography

一般論文

1. Prograde P-T path of jadeite-bearing eclogites and associated HP/LT rocks from western Tianshan, NW China
Wei Lin and Masaki Enami


中国北西部・西部天山地域に産するヒスイ輝石を含むエクロジャイトおよび高P/T変成岩類の累進P-T経路
林  緯・榎並正樹

中国北西部・西部天山地域Akeyazhi川流域に位置するKuldkoulaの緑色片岩帯中には,ヒスイ輝石を含むエクロジャイトや青色片岩類が局所的に産する.これらのP/T型変成岩類に含まれるざくろ石は,全体として結晶の中心部から周縁部にかけてMgが漸増,Mnが漸減する昇温型累帯構造を示し,低 Ca/高Feの核部と高Ca/低Feの外縁部に二分される.ざくろ石の核部は,ヒスイ輝石-オンファス輝石(Xjd=0.34-0.96),バロワ閃石?タラマ閃石?パーガス閃石,パラゴナイト,緑れん石,ルチル,石英と少量の曹長石を包有する.他方,ザクロ石の外縁部には,少量のオンファス輝石,藍閃石,緑レン石,ルチルと石英が包有物として認められる.また,基質部には主要なエクロジャイト相の鉱物としてオンファス輝石,藍閃石,パラゴナイト,ルチルおよび石英が産する.これらの鉱物共生より見積もられる平衡条件は,ざくろ石の核部形成時において0.9GPa/390℃- 1.4Gpa/560℃外縁部形成時には1.8 GPa/520℃エクロジャイト相変成作用ピーク時で2.2GPa/495℃-2.4GPa/℃である.これらの変成条件と鉱物の組成共生関係の連続的な変化は,研究対象とした高P/T型変成岩類が,次のような反時計回りのP-T経路を経験したことを示す:(I)青色変成相高圧部?エクロジャイト相低圧部条件下の沈み込み初期,(ii)ほぼ等温条件下での圧力上昇を示す沈み込み後期,(iii)わずかな冷却をともなう沈み込み最末期,この,沈み込み最後の時期に認められる負のP-T経路は,(I)沈み込みスラブによる連続的な沈み込み帯の冷却と(ii)上昇開始直前に起こったスラブ上部の逆転した温度構造を横切る変成岩類の移動の記録である可能性が高い.

Key words: China, counterclockwise pressure-temperature path, eclogite, glaucophane, high-pressure/low-temperature metamorphism, jadeite, western Tiansban


2. SHRIMP U-Pb ages of the Latest Oligocene-Early Miocene rift-related Hidaka high-temperature metamorphism in Hokkaido, northern Japan
Tadashi Usuki, Hiroshi Kaiden, Keiji. Misawa, and Kazuyuki Shiraishi

漸新世最末期-中新世前期のリフトに関連する日高高温変成作用の高感度高分解能イオンマイクロプローブU-Pb年代
臼杵 直ほか

日高変成帯におけるグラニュライト相変成作用の時期を決定するため,泥質グラニュライト3試料から分離したジルコンを高感度高分解能イオンマイクロプローブ (SHRIMP)を用いてU-Pb年代測定を行った.ジルコンの被覆成長リムやプリズム状のジルコンのU-Pb年代は23.7±0.4Maから17.2±0.5Ma(206Pb/238U年代,31分析)を示す.このことは漸新世最末期-中新世前期に日高変成帯にグラニュライト相変成作用が起こった有力な証拠である.この高温変成作用は千島海盆と日本海盆のリフティングの間にアセノスフェアの上昇によって引き起こされたと考えられる.

Key words: back-arc rifting, granulite, Hidaka Metamorphic Belt, SHRIMP U-Pb age, zircon


3. Organic facies and geochemical aspects in Neogene neritic sediments of Takafu syncline area of central Japan : Paleoenvironmental and sedimentological reconstructions.
Sawada Ken

中部日本、高府向斜地域の新第三系浅海性堆積物における有機物相および有機地球化学的特徴:古環境および堆積学的復元
沢田 健

中部日本、高府向斜地域に分布する新第三系浅海性堆積物において、ケロジェン・マセラルの有機岩石学的記載と、その炭素同位体比(13C)およびバイオマーカーの有機地球化学的分析を行い、新第三紀の古日本海南縁地域(海域)の古環境と堆積システムの年代変化を復元した.高府向斜地域には上部中新統〜下部鮮新統の千見層(青木層)、境ノ宮層(小川層)、下部柵層が分布する.これらの地層中のケロジェン・マセラル組成の変化は、従来の堆積相解析や古生物学研究から推定されている堆積およびテクトニクス史とよく一致していた.ケロジェン・マセラルの13C値の変化は古日本海南縁域周辺の陸上植生の変化を反映し、一方、バイオマーカー組成の変化は浅海域で生物生産を担う海生プランクトン群集の変化を反映していると推察した.さらに、それらの変化傾向が同調していることから、新第三紀の古日本海における陸上植生と海洋生物生産の共進化の可能性を指摘した.

Key words: biomarker, carbon isotope composition, kerogen, land-ocean linkage, Neogene paleo-Japan Sea, neritic paleoenvironment

4. In-situ hydraulic tests in the Active Fault Survey Tunnel, Kamioka Mine, excavated through the active Mozumi-Sukenobu fault zone and their hydrogeological significance.
Tsuyoshi Nohara, Hidemi Tanaka, Kunio Watanabe, Noburo Furukawa and Akira Takami

茂住-祐延断層を貫く活断層調査トンネルにおける原位置水理試験とそれらの水理地質学的重要性
野原 壯ほか

跡津川断層帯の茂住-祐延断層を貫く世界初の活断層調査専用トンネルにおいて,活断層の水理地質学的調査と原位置水理試験を行った.その結果,地下深部の活断層本体が絞り込まれ,その近傍の小断層に関連した導水構造が把握された.活断層に沿って,その両側に2つの非対称な導水構造が認められた.そのひとつは,地表とトンネル間の連続したほぼ垂直な導水構造で,もうひとつは古い天水起源の水を蓄えた主な帯水層と推定された.地表から調査が困難な地下深部の構造の連続性に着目した原位置での調査の結果,この主な帯水層中で,小断層沿いのせん断による充填鉱物の破壊と割れ目の発達が生じ,二次的に間隙率が増加したことが示された.

Key words: active fault, Atotsugawa Fault system, discharged water, hydraulic test, Mozumi-Sukenobu Fault, tunnel

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