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┴┬┴┬【geo-Flash】日本地質学会メールマガジン ┴┬┴┬┴┬┴┬┴
┬┴┬┴┬┴┬  No.010 2007/09/18   ┴┬┴┬  <*)++<< ┬┴┬
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★★目次 ★★
【1】「ちきゅう」による南海トラフ掘削開始間近!
【2】月周回衛星「かぐや(SELENE)」による地質調査
【3】日本初の天然ダイアモンド発見!
【4】地学教育公開授業
【5】日高山脈地質くらぶ"千栄の家"存続にご協力を!
【6】コラム「間違いだらけの発音選び」その2(全3回)

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【1】「ちきゅう」による掘削開始間近!
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■ 南海トラフ地震発生帯掘削計画(NanTroSEIZE: Nankai Trough
Seismogenic Zone Experiment なんとろさいず)は、いよいよ「ちきゅう」
を用いたIODP (Integrated Ocean Drilling Program: 統合国際深海掘削計画)
の計画として、9月21日に和歌山県新宮港を出港し、掘削を開始します。
「ちきゅう」は来年2月5日まで無寄港で掘削作業を続ける予定で、その間
3つのエクスペディション(研究航海)が予定されています。
10年以上にわたる科学計画の立案から実施までの集大成の幕開けです。
「ちきゅう」による掘削は、最終的にプレート境界の巨大地震発生帯まで掘削
するにはまだ数年はかかる予定だそうですが、壮大な地球科学プロジェクトの
開始であります。詳しくは、、、

http://www.jamstec.go.jp/chikyu/jp/index.html
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【2】月周回衛星「かぐや(SELENE)」による地質調査
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先週,種子島からH-IIロケットにより,月周回衛星「かぐや(SELENE)」が打ち
上げられた.このプロジェクトの地質学との関わりについて,簡単に紹介する.
この探査機は,月の両極の上空を通る,高度約100kmの軌道を約1年間にわたっ
て周回するリモートセンシング衛星であり,多種類かつ詳細なグローバルマッ
ピングをすることが,「かぐや」のスローガンである.それにより,月の起源
と進化にせまる.

地質学的に興味深い研究対象が,月にはいろいろある.衛星とはいえ,月は半
径が約1700kmと,ガス惑星を除き,太陽系では地面のある天体のうち,比較的
大きな部類に属する.そのため,インパクト・クレータリングなどの外的地質
過程はもちろん,テクトニクス・火成活動・風化・侵食・堆積というように,
様々な地質過程を経験している.そしてそれらの産物が,多様な地質体として
残されている.しかし,内的過程を駆動した熱源が地球ほど多くなかったため,
表層の地質を改編する主要な活動は,20〜30億年前にほぼ終息した.そして,
地球ほど速やかな侵食は起こらないため,地球でいえば太古代の様々な情報を,
月面あるいは表層地質から読み取ることができる.マグマオーシャンや隕石重
爆撃の時代は,地球型惑星の最初期の重要な時代であるが,それらの地質学的
な手がかりが地球ではおおかた消去されているのに対し,月では表層地質や地
形にそれが残されている.月はロゼッタストーンなり,というわけである.ま
た,多様な地質過程があったとはいえ,月は地球に比べれば単純な系であり,
表層地質からも,グローバルな応力場変遷やその原因としてのグローバル熱史,
そしてまた月・地球系の起源や軌道進化について,制約を与えることができる
ものと期待されている.また,ジャイアント・インパクト説が正しかったかど
うか,正しかったとすればどんな様子だったのか,というたぐいの問題につい
てである.詳しくは地質学論集第50号の拙文をご覧いただきたい.

「かぐや」は月周回軌道に入って定常的周回軌道を目指して徐々に高度を落と
し,10月後半頃から本格的観測を開始する予定である.1年間の観測期間の後,
データは順次公開されることになっている.それには,地質学者が扱うべきも
のが大量に含まれている.詳しくは適宜,宇宙航空研究開発機構(JAXA)のホー
ムページに掲示されるはずである.

山路 敦 (京都大学)/ 山口 靖(名古屋大学)

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【3】日本初の天然ダイアモンド発見プレス発表報告
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■ ご存知の方もお多いと思いますが、札幌大会直前でしたが本件のプレス
発表
を行いました。大きな反響を巻き起こしましたが、今後学術的な検討
が進む
ことと、露頭の保護や、天然ダイアモンドの存在する意義の社会教育
など、
学会として社会に発信していかなければならないことなど、おおくの
問題が
提起されました。地質学の面白さや、重要さに触れてもらう需要な機
会を
作ってくれました。
ちなみに本件のプレス発表後、学会HPには1日で約5万件以上のアクセスが
ありました。これはこれまでのアクセス件数の約1年分に匹敵します。
プレス発表の資料はプレスリリースのページから閲覧できます。

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【4】地学教育公開授業
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■ 学会内外で地学教育に情熱を注いでこられた阿部国広 会員の研究授業
が9月27日に開催されます。国民の素養としての地学(地球惑星科学教育)
の普及と定着を目指して、関係者の方々のご協力により公開授業として開催
されることになりました。
授業単元は、
「流れる水の働き」〜川は平野を作り出す〜(5年)
です。
参加希望者の方は、下記まで一報ください。

日本地球惑星科学連合 教育問題検討委員会
  瀧上(takigami.yutaka@nifty.com

詳しくはこちら 詳細資料(PDF)

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【5】日高山脈地質くらぶ"千栄の家"存続にご協力を!
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日高山脈地質くらぶ(くらぶ設立の折には、地質ニュース内においても紹
介.また,日高町による「日高山脈館の運営および調査活動の支援」は地質
学の普及および発展に大きく貢献しているということで、2004年に日本地質
学会として表彰)からのお知らせです.(メルマガ編集部)

みなさまご存知の通り、日高山脈地質くらぶ「千栄の家」は、故・樋掛鉄也
氏の"資金的に苦しい学生・院生たちのへの援助""学生同士の交流""交流の輪
を生かして日高山脈館を一緒に盛り立てていく"という信念のもとに生まれ
ました。日高山脈全域および日高町にかかわる地質帯を調査している若手
研究者のために利用しやすい料金体系を設定し、フィールドの宿舎として、
また若手研究者の支援、交流の促進を目的として運営が行われています。
これまでに200名を越える学生・研究者の利用があり、絶大なる支持と感謝
をいただいてまいりました。運営費(賃料、光熱費、修繕費など)は、すべ
て会費やカンパによって賄われています。これまで、多くの方のご協力をい
ただいて活動を維持してきました。しかし、数年前に大雪のための大幅な修
繕を行なったほか、日高地方へ長期の調査で訪れる研究者が減る傾向もある
ようで、運営費が底をつく勢いです。これまでの数年分の会計報告ファイル
を閲覧希望の方は
hmc@town.hidaka.hokkaido.jp
にご連絡いただければ,添付ファイルでお送りいたします.

今なお、日高に訪れる学生・研究者(とくに若手)は、千栄の家を利用し、
成果を上げています。設立の信念からしましても、若手の研究者が千栄の家
を必要としている限り、ここで千栄の家を閉じるわけにはいきません。そこ
で、これまでご協力いただいてきたみなさまに、重ねましてのお願いです。
千栄の家の運営存続にご協力いただけないでしょうか。「千栄の家」は会員
制となっています。これまで、現地事務局(小野)が直接お会いした方々を
中心に、引き続いての会費納入のお願いをしてきました。毎年1万円の納入を
お願いするのも心苦しいものがありましたので、管理に協力いただいている
会員さんとも協議して『夏のオリンピックイヤーに1万円(つまり4年に1回1
万円)の会費納入をお願いする』形を取ってきました。しかし、会費をいた
だく来年度まで存続し得ない状態に陥っています。オリンピックイヤーにか
ぎらず、会費を受け付けます。また、カンパは一口一万円から受付いたしま
す。ご一報の上、下記口座までお振込下さい。余剰分は次年度以降に繰越し
て使用させていただきます。今後のよりよい運営を目指して;・ご協力やご
利用いただいた方の中でも連絡先(メールアドレス)不明の方が複数いらっ
しゃいますので、連絡先把握につとめます。同じ職場にいらっしゃる方のア
ドレスをお尋ねすることなどが出てくると思いますので、その際はどうぞご
協力お願いいたします。

・9/9から札幌で開かれる地質学会で、PRとカンパの呼びかけを行います。
・これまで数回メールマガジンを流してきましたが、皆様に運営や活動状況
をお伝えしきれる状態ではありませんでした。ホームページの設置も含め
て、情報伝達の方法を検討します。何卒、よろしくお願い申し上げます。

(なお私事ですが、現地事務局の小野は一身上の都合で3月末に退職しまし
た。「千栄の家」の現地事務局は、後任として山脈館に着任した東に一任し
ています。今年以降も運営管理体制は継続していますので、どうぞご安心く
ださい。)

<振込先>
苫小牧信用金庫 日高支店 (普)117494日高山脈地質くらぶ「千栄の家」
小野昌子
(注;担当者名(小野昌子)は9月中旬を目処に変更の予定です。口座番号
は変更ありません。)

<連絡先>
日高山脈館 東 豊土(4月より、小野に代わり着任いたしました。)
〒055-2306 北海道沙流郡日高町本町東1-297-12
電話&FAX 01457-6-9033
hmc@town.hidaka.hokkaido.jp

臼杵(小野)昌子、東 豊土



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【6】コラム 「間違いだらけの発音選び」その2(全3回)
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その道の研究者が自分の分野名の発音を間違えていることがある。Burial を
バリアル(本当はベリアル),warmingをワーミング(正しくはウォーミン
グ),Neogeneをネオズィーン(正しくはニ(ネ)オジーン;アクセントは
ニ,またジーにも第二アクセントあり),Albianをアルビアン(アクセント
はアにおくべきで,ルにおいてはいけない(ありえない))。schistをスィ
ストなどと発音すると,この人は本当にシストを研究しているのか,と疑わ
れ,低く見られる。Analysisをアナらいシスとする人もいる。アなリシスで
ある。Drill: これは,アクセントはシラブル(母音を含む)にしかないはず
だから,どリルなどと発音するはずはない。アクセントはリ以外考えられな
い。(つくばにあるビルのCreoも,皆 くレオと発音しているが,英語とし
てはありえないのである。日本語の宿命なのであろうか?) (もっともバ
カらしいのは、あるクリニックのCMで、クーリニックとクーにアクセント
をおいているのだ。英語人が、どれほど日本を馬鹿にするかが、わかる。シ
ラブルもない子音にアクセントを置くなんて(また、それがために長音にな
るなんて)、あり得ない中のあり得ない、なのである。正しくは、当然、リ)。

そのほか。日常用語的になっていて,もはや修正が難しいのも多い
が,英語として発音するときは,正しく行うべきである。たとえば,
channelは(チャンネルなどではなく、チャヌルまたはチャヌー(的
に)),acousticはアコ(またはアコー)スティックではなく,アクース
ティック(アクセントはクー;ともかくアクセントのあるシラブルの発音は
正確に,がモットーである)。また,hammockyは はマキ,faciesはファ
シースではなく,フェイシーズである。labelはラベルではなく,レイ
ボー,sampleはサンポー,などのほうが通じやすい。stickerはステッカーで
はなく,スティッカー,digitalはデジタルと新聞、放送、一般に使われてい
るが、ディジトー(デズニーと発音すると、いかにも田舎くさい)。
volunteerはボランティアー(アクセントはティ),matureはともかくメイ
チャーなどではなく,マチュア。また,majorはメジャーリーグなどで使わ
れるが,もちろんメイジャーである。Measureの発音は難しく,メザーとメ
ジャーの間くらいである。

そのほか,思いつくままにあげると,patternは,99%の日本人が,パターン
とターにアクセントを置くが,もちろん,パタンであって,アクセントはパ
である。plumeは,日本でも以前は正しくプルームと書かれていたが,いつ
の日からか,プリュームとされるようになり,岩波も,そう使うことがある
ようである.しかし,これは,イギリスでも,アメリカでも,プルームであ
る。Diameterはダイアミター、アクセントはア(ダイアマター的)。また,
英語と米語の発音の差は,日本人にとっては,気にしていたらきりがなく,
区別して行うこともないとは思うが,彼らは結構気になっているようである。
(差別社会のせいかもしれない)。againは英語ではアゲインだが,米語では
アゲンである。こうした,ちょっとした違いは非常に多い。

小川勇二郎(筑波大)

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geo-Flashは、月2回(第1・3火曜日)配信予定です。原稿は配信前週金曜日
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