「地質の日制定記念 サイエンスフェスティバル−化石やきれいな石にさわろう−」速報

栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科博士研究員)


 新潟大学では、「地質の日」の5月10日(土)に「サイエンスフェスティバル−化石やきれいな石にさわろう−」を開催しました。会場となった理学部には、小学生と保護者を中心とする約450名が詰めかけました。毎年行われている大学祭を除けば、このようなイベントが大学で行われることはまれですが、予想をはるかに上回る人出と子供たちの熱気に正直驚かされました。以下では、会場の催し物の写真を交え、当日の様子を紹介します。なお、アンケート結果などを含めた、より詳しい報告は日本地質学会Newsに投稿する予定です。

写真1:メイン会場の様子.化石のクリーニングやレプリカ作りが行われた会場です.
写真1:メイン会場の様子.化石のクリーニングやレプリカ作りが行われた会場です.

 今回のイベントでは、「地質の日」制定記念イベント実行委員会(委員長:宮下純夫)が実施母体として立ち上げられ、大学内では理学部地質科学科、自然環境科学科、教育学部地学、災害復興科学センターが、学外ではNPO法人ジオプロジェクト新潟、新潟県立自然科学館および地団研新潟班が実施組織として関わりました。当日は、スタッフとして教員、学部生・院生等合わせて約50名が参加しました。

 

 多くの参加者に来てもらうためには、広報活動が重要になってきます。今回は、昨年度から地域連携型の普及事業を通して関係を深めてきた新潟市西区政策企画課の協力を得て、区内18小学校の全生徒約8500名に案内のちらしを配布しました。その他、大学の公式サイトやジオプロジェクト新潟のホームページにも案内が掲載され、それらを見て来場した大学関係者も少なくなかったようです。

 会場としては、理学部内のメイン会場のほか、2007年にオープンした理学部サイエンスミュージアムも活用されました。午前10時の開場を待たずして参加者が集まり始め、ピークとなった11時過ぎには、人気ブースの前は長蛇の列となってしまいました。イベントはお昼をはさんで午後3時まで行われましたが、昼食には生協の食堂などが利用され、大学の雰囲気を楽しまれた家族連れの方も多かったようです。

写真2:地球のパズルに挑戦! お兄さんがわかりやすく解説してくれました.
写真2:地球のパズルに挑戦! お兄さんがわかりやすく解説してくれました.

 当日行われた催し物は、化石や鉱物など小学生にも親しみやすいものから、地質学の専門的な内容をわかりやすく遊びながら解説しようというもの、さらに中越地震のパネル展示まで、多方面の内容に及びました。例えば、化石のレプリカ作成・クリーニング、恐竜のペーパークラフト・塗り絵、微化石の観察、岩石薄片の観察、プレート運動のパズル、鉱物展示、火山岩変成岩の展示、液状化の実験、生痕の観察、堆積構造形成実験、中越地震のパネル展示、サイエンスミュージアムのガイドツアー、岩石を割ってみよう、などです。これらのいくつかは、地質科学科の学生が運営するグループ(自主ゼミと呼ばれる)によって発案されたもので、学生たちの自由な発想と行動力が存分に発揮されていました。

 

 実のところ、多くても100人というあたりが、開催前の来場者数の予想でした。様々な反省点はあるのですが、なんといっても、子供たち、そして大人たちもが潜在的にもっている地学への興味というものを、400人からが発するパワーとして直に感じられたというのは、きわめて大きな収穫であったと思います。スタッフとして参加した学生・院生からも「地質学の未来は明るいですね!」という声が上がったほどで、子供たちから逆に元気をもらったと言えるのかもしれません。

写真3:石捨て場も宝の山?? 色々な岩石や鉱物を見つけました.
写真3:石捨て場も宝の山?? 色々な岩石や鉱物を見つけました.

 この企画と平行して、新潟県内の地学普及ネットワークの構築を目指した「新潟地学教育・普及連携協議会(仮称)」の設立が進められております。そして来年以降についても、さらなる戦略的な取り組みが検討されています。「地質の日」は確実に私たちの意識を変えました。そして今回の取り組みが、今後どこに波及し、どのような展開へとつながっていくのか、非常に楽しみであります。