2017年 年頭挨拶


 

日本地質学会創立125周年を迎えるにあたって

 

2017年1月
一般社団法人日本地質学会 会長 渡部芳夫
 

日本地質学会は,1893年に東京地質学会として創設されて以来,2018年5月に創立125周年を迎えます.
 
  明治維新の後,日本における地質学は,資源探査と国土の開発のために必須の学問として,その歴史が始まりました.農業,工・鉱業は日本列島の地質の解明と ともに発展し,鉄道や道路の敷設,トンネル掘削地の決定などの大規模建設事業には地質学の裏付けが不可欠でした.地質学会の最初の100年の歴史におい て,地質学は地層や岩石・化石・鉱物などを対象とする学問として発展することによって,大いに日本の近代化に寄与し,社会の発展に貢献してきました.
 
 創立100周年の1993年以降には,地球科学フロンティアである海洋底へのチャレンジにより,レア・メタルやメタンハイドレート,海底熱水鉱床など,未来に繫がる新しい資源・エネルギーの発見が相次いでいます.
 
  また,地球の生成から現在に至るまでの地球史の統合的理解が進むのと同時に,巨大津波についての中長期的予測など,地質変動の未来予測が重要な研究課題と なるに至り,頻発する巨大自然災害,複雑化する地球環境問題への対応に,地質学の貢献が強く期待されてまいりました.2011年3月11日の東北 地方太平洋沖地震とそれに続く原子力発電所事故は,社会の持続的発展と国土の強靱化に向けて,地質学が担うべき地質環境の評価と適切な情報提供の重要性 を,明確に再確認させるものでした.
 
 日本地質学会は,創立125周年を契機として,先端的研究の推進と成果の共有をさらに 進め,ジオパークや地学オリンピックを発展させるとともに,全国民的地学教育の充実を目指します.それらの成果が相まって,自然災害や地圏の安全な利活用 に対する市民の理解を高める事となり,それにより産業の持続的発展や新たなイノベーションを支えることができると信じるからです.
 
 具 体的な創立125周年記念事業としては,広く内外から関連学協会を招待する記念大会,記念シンポジウム,最近25年間の地質学的発展のレビュー,そして地 質学から社会へのメッセージ,その他の記念出版物の発行など,一連の記念事業を計画しています.まず具体的には,本年から地質学雑誌での125周年記念レ ビュー企画がスタートします.日本地質学会の専門部会を中心に,この25年の進歩を踏まえた現在の到達点や課題を集約するものです.詳細な紹介は地質学雑 誌に掲載されます.
 なお,これらを含む創立125周年事業の企画の全てに,新たに作成した記念ロゴを付して内外にアピールいたします.
 
 これらの記念事業を通じ,日本地質学会会員全ての力をお借りして,地質学は将来に向かって,さらに社会に貢献し続ける事を明確に伝えたいと考えます.会員の皆様もそれぞれのお立場で,共にこの2年間,特別な意識をもって活動してくださることを期待いたします.
 
  この125周年記念事業を契機に,一般社団法人日本地質学会としての将来について見据え直し,次の周年記念を充実して迎えるための方策を検討して参りまし た.基本的なアクションプランのいくつかは,既に来年度の学会事業として開始する予定でおります.まず,この25年で記憶に残っている重要な経緯として, 以下のものが挙げられます.
 

  • 1992年:日本地質学会正式欧文誌Island Arcの発刊
  • 2006年:日本地質学会第I期中期ビジョン策定
  • 2008年:地質の日「5月10日」制定
  • 2008年:日本地質学会の社団法人化
  • 2008年:日本ジオパーク委員会設立
  • 2009年:日本ジオパークネットワーク設立と学会支援委員会設立
  • 2009年:地球惑星科学連合設立と連合への団体加盟
  • 2010年:任意団体日本地質学会の解散
  • 2012年:日本地質学会広報誌「ジオルジュ」創刊
  • 2015年:日本地質学会第II期中期ビジョン策定
  • 2016年:国際地学オリンピック日本開催

 
 これらは2006年の第I期中期ビジョン策定に始まり,学会や地質学を取り巻く社会情勢に対応した10年程度の将来に向けての検討と決断・実行であったと言えます.これらの日本地質学会が折々に示した判断には,間違いは無かったものと考えております.
 
 そのうえで,今回創立125周年事業を契機とするアクションプランの大目的とそれを実現するために学会が確保すべき手段を,
国民全てに地質学に関する有益かつ正確な情報をタイミング良く発信していくこと
ならびに
上記を実現する能力・手段・影響力・人的組織的関連を持つ事
としました.抽象的な表現ではありますが,日本地質学会が,社会にとって有益な学術団体として存在する価値があり続ける事を,具体的な学会運営の上で確保するという事です.
 
  この目標に向かって,学会としてはその結果も形にするために,アクションプランは2017〜18年の2年間に短期的,集中的に実施可能なものを選択してお ります.添付資料に詳細を示しましたが,現在の日本地質学会が認識している課題を抽出し,それらの解決すべき課題について,特に意識すべき受け手を踏まえ た解決手段を提案しております.
 
 今回のアクションプランでは,受け手を重視した表現になっておりますが,本学会にはもとより,地質 学・地球科学の進展に主体となって寄与する任務が最上位にあります.成果の公表手段が多様化してきている現在,日本地質学会としては,地質学の最新の成果 や人材の集約するコミュニティーとして,地方支部・専門部会そして学術大会等を有機的に,且つ意識的に運営することで,新たな課題解決の醸成の場としてあ り続ける努力をすることが重要であると考えます.これらの研究者・技術者集団としてのスケール効果を十分に発揮できるような運営財政上の手当も重要な課題 として挙げております.
 
 今年から始まった2年間を,日本の地質学・地球科学にとって記憶に残る日本地質学会となるように,会員の皆様と 共に活動して参りたいと思います.125周年記念事業の成功に向けて,会員各位の絶大なるご理解とご協力をお願いしつつ,日本地質学会のさらなる発展的将 来を祈念して,年頭のご挨拶といたします.
 

別添資料 創立125周年に向けて重点化する短期的アクションプラン

社会の各階層や職種・環境の異なる人々に地質学に関する有益かつ正確な情報をタイミング良く発信していくことを目的に,現状での学会を取り巻く課題について,およそ平成29年度から2年間程度の期間に重点的に実施するアクションプランを提案したもの.
 課題は第II期中期ビジョンから原則として抽出した.