2020年 年頭挨拶



皆様に,令和2年の年頭のご挨拶を申し上げます.

昨年,令和の時代を迎え,日本地質学会も創立126年となりました.次なる25年に向けて,新たに歩み始めたところです. 9月には第126年日本地質学会学術大会(山口大会)を開催すると共に,11月には「GSSPシンポジウム」を産業技術総合研究所共同講堂において開催いたしました.また学会主導で「学術大型研究計画」を内閣府に提案するなど,学術研究分野の充実を図ってきました.また国際連携においては,タイ地質学会との交流協定を更新し,大韓地質学会とはチェジュ大会において講演すると共に,2024年に韓国で開催される万国地質学会議に向けて,連携をより深めていくことなどについて合意いたしました.さらに4月には文部科学省科学啓発ポスター「一家に1枚のポスター」として「日本列島7億年」を作成・配布いたしました.これらの事業実施にあたり,ご協力いただいた学会員・関連団体の皆様には,この場を借りて御礼申し上げます.

日本地質学会は,我が国の地球惑星科学系の最大の学会であり,日本の地質学界の一翼を担っています.これもひとえに長年にわたる諸先輩方の地質学に対する純粋な探求心,真摯な取組み,そしてたゆまぬ努力の賜物です.私たちはそれを継承していくと同時に,地質学のさらなる進化と発展,そして社会における重要性の発信を進めていく立場にあると認識しています.ここでは,現在,我が国における地質学をとりまく環境を踏まえつつ,私が考えることをお話しして,年頭の挨拶とさせていただきます.

昨年,我が国の出生数は初めて90万人を割り,また高齢化率は世界最高の28.4%となり,少子高齢化が急速に進んでいることが明らかになりました.そして,なかなか進まない景気浮揚の中で,大学や研究機関などを取り巻く研究・教育環境は一段と厳しくなってきています.産業界においても,人材不足や効率化,あるいは費用対効果などの考えの中で,基礎部門の維持が難しくなりつつあります.とりわけ地質学を含む基礎科学分野は,財政の逼迫や不安定な研究環境により国際的な研究力の低下が指摘されています.しかしながら,基礎科学の重要性は誰もが認めるところであり,地質学においても基礎的な研究から多くの革新的な学説が生み出され,これに技術革新や機器開発による新たな分析手法の開発や分析精度の高精度化,対象範囲の拡大が加わり,地殻表層の理解が進みました.それに伴い,新たな研究・科学分野の創出も進んでまいりました.加えて地質学は,自然災害や天然資源などの観点において,私たちの社会・生活に密接に関わっています.どんなに厳しい研究・教育環境にあっても,我々の責務と使命を果たしていかなければなりません.

そのために日本地質学会は,地質学および関連学問分野のさらなる進化・発展に寄与するため,これまで築かれてきた研究に加え,大型研究や新たな研究領域の創案・推進に努めると共に,日本地球惑星科学連合(JpGU)や学術会議と連携して地質学の継続的発展を目指すことが重要と考えます.また地質は,国内にとどまるものではなく近隣諸国へと連続し,多くの地質現象は,全球的な地球活動と密接に関連しています.現在,日本地質学会は海外5学会と交流協定を結んでいますが,各学会との研究連携を積極的に進めると共に,国際地質連合(IUGS)などの国際学術研究団体とも連携を深め,グローバルな研究展開に寄与していくことが大切です.また,これまで以上に学術大会,あるいは地質学雑誌およびIsland Arc誌の充実を図り,それを通して地質学の発展に寄与するとともに,社会への情報発信と日本地質学会の社会におけるプレゼンス向上を目指さねばなりません.

日本の社会における地質学の認知度は,徐々にではありますが,上がってきているように感じます.当然のことながら,これは日本地質学会の活動によるものだけではなく,ジオパーク活動,地学オリンピックの開催,さらにはメディアによる情報提供なども大きな要因となっています.今後も,学会広報活動やフォトコンテストの開催,ジオパーク・地学オリンピック・地質の日事業への支援,学術大会での一般公開プログラムや地質情報展などを幅広く展開することにより,社会における地質学の認知を図る必要があります.

また,近年,頻発化・激甚化する自然災害に対して,行政・住民などの地学現象に関する知識と理解は,まだまだ十分であるとは言えません.アジアモンスーン地域の変動帯に位置し,多様な地形・地質により構成される我が国にあっては,地域特性に応じた知識・情報の提供が不可欠です.またそれを必要とされている方々に積極的にそれらを提供するアウトリーチが重要です.そのためには,地域地質に精通した学会員の皆様の知識とお力,そして地方支部をはじめとして学会の地域への関与と連携が必要です.

学会の根幹をなすのは,一人一人の会員の皆様です.しかしながら,日本地質学会も他の学会と同様に,会員数の減少に直面しています.会員の皆様にとって魅力ある学会であり続け,また会員活動を支援するために,研究成果や技術の共有,出版・広報活動の充実や新たな情報発信技術の活用などのサービスや機能の充実を進めてまいります.特に学生・院生会員の育成,若手研究者への支援,地質技術者への継続的な専門教育(CPD)の提供,ならびにシニア会員の活躍の場の創成などを進めていきたいと思います.これらを通じて会員の皆様が,学術・事業・教育をはじめとするそれぞれの場で,学術研究成果の社会との共有を進めていただければと思います.また,これらに伴い学会運営・組織についても,財務体質強化と各事業の健全化に努めると共に,事業活動の実態にあわせた学会組織のスリム化・効率化に努めていきたいと考えています.

3月には第36回万国地質学会議がインドのデリーで,また5月には地球惑星科学連合2020年大会がアメリカ地球物理学連合(AGU)との共催で開催されます.また9月には日本地質学会第127年学術大会が名古屋で開催されます.日本地質学会にとって,2020年が実り多き一年となるよう努力してまいりたいと思います.末筆になりますが,会員の皆様の今年一年のご健康とご多幸を,そして今年が皆様にとって大きな飛躍の年となりますことを祈念いたします.

2020年1月
一般社団法人日本地質学会 
会長 松田博貴
(国立大学法人 熊本大学)