会長挨拶

 
一般社団法人日本地質学会
会長 岡田 誠

 2022年6月11日より代表理事(会長)を務めることになりました.日本地質学会の維持・発展に最善を尽くしてまいりますので,2年間よろしくお願い申し上げます.

 本会は,我が国における地球科学系最大規模の学協会であり,自然科学としての地質学の発展に寄与するという使命を帯びています.同時に,社会に実装されている様々な地質系関連分野と緊密に連携することで,地質学の最新知見を伝えるとともに,社会における地質学的課題解決への貢献が求められています.さらに将来の地質学発展を担う人材の育成への貢献も必須であり,このために大学との繋がりも不可欠です.一方,本会では毎年80名前後の会員数減が続き,早晩学会活動の継続が困難になることが予測されています.本会の使命を果たし続けるためには,会員数の維持が必要不可欠です.このために,本年度より学生の入会を促進するために会費制度の大幅な変更を実施しました.同時に社会人となってからも継続して会員として活動頂けるよう,継続的な教育機会の提供や,CPD発行など社会人会員のメリット向上を図る施策のさらなる充実考えています.また,学会内における学問の健全な発展を促す上で不可欠な,年齢・性別・階層・分野などのダイバーシティー維持に積極的に取り組んでまいります.しかしながら,実際に入会して頂き,会員として継続して頂くためには,学会自体が魅力的でなければなりません.そのためには,日本地質学会が地質学の発展に大きく貢献することで「地質学は面白い」ということを一般社会に示し続ける必要があります.

 地質学は面白い.この言葉の意味は,本会会員のように地質学を専門としている人々の中では無意識に理解されていることでしょう.しかし,世間一般には,この面白さは認識されてはいないことも事実です.何かが「面白い」と思うためには,それに「関心」があることが前提です.地質学はその基本に立ち返ることで,人類共通の関心事と深く関わっていることがわかります.

 「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」.フランスの画家,ポール・ゴーギャンによる絵画のタイトルとして発せられたこれらの問は,我々人類の普遍的な問でもありましょう.「我々」を「生命」や「地球」と読み替えることで,これらの問はさらに普遍的なものとなります.高度に発展し拡大した人類の経済活動は,私たちのすみかである地球の姿を大きく変えつつあります.現代の経済活動は地質時代にゆっくりと蓄積されてきた天然資源を急速に採掘することで支えられていますが,その天然資源が早晩枯渇してしまうことはあきらかです.そして「我々はどこへ行くのか」.ゴーギャンの最後の問の答に対するより確からしい予測値を探すことが,まさに世界共通の関心事となっています.しかしその予測値は,先立つ2つの問,「我々はどこから来たのか」および「我々は何者か」に対する確かな答えの上に立脚する必要があるのです.そしてこれら2つの問に答える上で大きな鍵を握っているのが地質学です.

 地質学は,地層に刻まれた様々なできごとの痕跡を探ると同時に,地層の積み重なる方向を時間が流れる方向と認識することで,空間内の移動と時間軸上の移動を区別することなく行うことができます.地質学はこの特別な能力を駆使することで,地球誕生以来起こってきた様々なできごとを探ってきましたが,いまだ道半ばです.地質学の責務は,我々がどこから来て,何者であるのかについて確かな答えを探し,それを世界に伝えることではないでしょうか.そうした行動は地質学に対する一般社会の関心をひきつけ,やがては「地質学は面白い」ことを社会に伝えることにもつながります.そしてより確かな答えを探すために,地質学は常に発展し続ける必要があるのです.

 日本地質学会の使命は,地質学の発展に寄与し,その発展を牽引することです.そして「地質学は面白い」ことを一般社会に広めることができれば,本会を取り巻く厳しい状況も自ずと解決されてゆくと,私は確信しています.これから会員の皆様とともに,日本地質学会の維持・発展に取り組んでまいりますので,お力添えの程,よろしくお願い申し上げます.
 

2022年7月5日
一般社団法人日本地質学会
会長 岡田 誠(茨城大学)