会長あいさつ
2012年の年頭にあたって
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2012年1月 |
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2012年の年頭にあたり,地質学会理事会を代表して会員の皆様に年頭のご挨拶を申し上げます.昨年は日本の歴史に残る3.11東日本大震災と原発災害を始め,台風12号による紀伊半島を中心とした地盤災害など,大きな自然災害が頻発しました.日本地質学会は,犠牲者の皆様への哀悼を捧げるとともに,地質学的視点から復興への貢献に邁進する決意です.マグニュチュード9の超巨大海溝地震の余波はまだ続いており,それまで西方へ圧縮されて短縮していた東北日本は,逆に東側へと引っ張られている異常な状態が続いています.大きな余震や火山噴火も懸念されており,今後の推移を注意深く見守るとともに,巨大地震や津波,地盤災害,火山噴火などの自然災害に関する研究の発展に努め,減災・防災への貢献を強化する中で,地質学のさらなる発展の年にしたいものです.
さて,2011年度の地質学会の諸事業は,重要課題としてあげられていた地学オリンピックつくば大会が中止されるなど,本学会の事業内容も東日本大震災による大きな影響を受けました.しかし,支部や部会,委員会などの努力により,以下に要約するように成果をあげることができました.
東日本大震災に関しては,日本地質学会からの提言や震災対応作業部会による総括を行なうとともに,2011年度事業計画に震災復興にかかわる事業費を計上し,被災地域の博物館や研究機関への支援や震災に関する研究の促進に取り組みました.これらの取り組みや成果のいくつかは新聞などで報道されています.また,台風12号による紀伊半島における地盤災害に初めての取り組みとして他学会との合同調査団を派遣しました.水戸での学術大会は,様々な困難を乗り越えて日本鉱物科学会・茨城大学との共同開催という形で開催されました.東日本大震災や惑星探査に関する両学会共催の一般公開シンポジウム,地震や津波などをテーマにした市民講演会,市民に向けた震災関連ポスター展示など,社会的関心に応えるとともに地質学の意義や役割を提起する場ともなりました.Island Arc,地質学雑誌は,編集委員会の不断の努力により,多彩な特集号や総説が続々と掲載されており,順調に発行されています.ジオパーク運動も着実に前進し,世界ジオパークとして室戸が新たに認定されました.国内ジオパークも世界ジオパーク5地域を含めて20地域となり,関係自治体などにおける地質学関連の学芸員の採用も進んでいます.地学オリンピックはつくばでの世界大会が震災のために急遽返上されるなど,大きな困難に直面しましたが,関係者の努力によりイタリアでの開催にこぎ着け,金メダル獲得という快挙もありました.また,日本大会への参加者は直実に増加しています.一方,昨年度より理科4科目と数学,情報の総合点で争われる47都道府県の高校生による科学甲子園が開始されました.理科4科目のなかで,圧倒的に地位の低かった地学への追い風となることは確実と思われます.リーフレットでは一昨年の城ヶ島たんけんマップや地層処分に引き続き,三浦半島の地質図や超年代表などの新しい企画も着実に進行しています.また,地質の日の取り組みや惑星地球フォトコンテストは定着した活動となってきており,地質学の普及に大きく貢献しています.「友の会」や若手を対象とした情報交換サービスの構築なども進められており,地質学会の裾野を広げ若手の学会活動への積極的参加を促進する努力が続けられています.また,学会への外部からの依頼や委託などに関して対応できる体制を確立するとともに,その最初の取り組みが開始されました.地学教育に関しては来年度からの新指導要領実施に伴い,地学教員採用が増加しつつあるという嬉しいニュースが届いています.
東日本大震災は,我々の意識に大きな変化をもたらしました.例えば原発震災による深刻な事態は,エネルギーを巡る意識を大きく変え,風力,太陽光,地熱発電などの再生可能な自然エネルギーへの関心が高まっています.また,巨大地震に関しても大地に刻まれた痕跡からその履歴を読み取る研究の重要性があらためて認識され,政府による新たな地震調査研究の重要な柱の一つとなっています.また,地盤液状化や斜面災害,宅地の盛り土崩壊など,地震や大雨による被害は,直接の足下の地盤や地質の特徴を理解する重要性を示しています.ところで,日本での鉱山や炭鉱の相次ぐ閉山から,日本の大学や研究機関における鉱床地質学分野の衰退という残念な状況が進行していますが,レアメタルの供給危機に象徴される資源の問題は,改めてそうした分野の重要性を示しています.
以上の様な状況のもとで,地質学の重要性やその社会的意義に大いに確信を持って,地質学の多様な分野の研究を大いに発展させたいものです.そして地質学の社会的位置を高めるとともに,防災・減災のために大いに貢献し,初等・中等教育における地学分野の地位を高め,一般社会における地質学リテラシーの向上を図りたいものです.今回の震災の中で様々な教訓が語られていますが,防災・減災を図る上で,もっとも重要の要素のひとつとして,グローバルな観点から身近な地域までの地質学的・地形学的特徴を十分理解しておくことの重要性が上げられています.地質学会理事会はこれらの様々な課題の推進のために大いに奮闘する決意です.こうした成果が,地球惑星科学連合の大会や9月の地質学会大阪大会の場で多数報告され,発信されることを願っています.大阪での大会では,大規模自然災害や地学教育・アウトリーチなどに関して,関連学協会とも連携・協力して,シンポジウムなどの企画準備が進められています.大阪での大会を盛り上げ,大成功へ導くために,会員の皆様のお力添えをお願いする次第です.



