2022年度日本地質学会の新しい表彰体系:変更の要点について

(2021.10.4掲載)
 
会長 磯行雄


日本地質学会では,これまでに会員・非会員の表彰を永年行ってきました.しかし,21 世紀に入ってはや20 年が経過し,現代的な学会動向の観点から眺めた際に,これまでの伝統的な体系だけでは必ずしも十分に表彰しきれていなかった点が見えてきました.そこで,現在の学会執行部のなかで議論し,またその原案について理事会・総会でご紹介・ご承認をいただいて,2020-2021 年度に賞体系を大幅に変更しました.その中では,従来よりも賞の数を増やし,多様な年齢層の会員に対して満遍なく表彰の対象となっていただけるように配慮し,またそのための学会規則の変更を行いました. 
しかし,変更箇所が多いにも関わらず,硬い言葉だけで書かれた規則改変だけでは,新たな賞体系の内容,とくに各賞の間の相違について,会員の皆様に十分理解していただけていない可能性があることを危惧します.そこで,以下に,改めて複数の賞の内容整理と相互比較を簡単に,ご説明いたします.

1)学会賞と学会功績賞(新設):本学会の最高位の表彰として「地質学会賞」が位置付けされています.この選考対象は,あくまで地質学における学術的業績の高さが評価される会員とすることには,従来から何も変更はありません.一方,このたび新設しました「学会功績賞」の対象は,以下の点で「学会賞」のそれとは区別されます.「学会賞」は,既に公表された学術論文の質的高さ(基本的に国際学術誌に発表された論文が,どの程度,世界の学会に積極的な影響を及ぼしたのか)を基に本学会を代表する学術業績をあげた会員を選考します.これに対し,「学会功績賞」は,学術論文のみならず専門書・教科書(英文あるいは和文)の執筆や学会運営等への深い貢献を評価対象の中心におくものです.

2)ナウマン賞(新設):これまで,賞の対象となる会員の年齢層が,大きく二局化していました.すなわち,学会賞がベテラン会員(基本的に50 歳以上)を対象とするのに対して,そのほかの賞はいずれも主に20-30 歳代を対象としてきました.すなわち,中堅の中でもやや年齢の高い会員に対する表彰区分が欠落していました.そこで,主に40 歳代の会員を対象にした表彰を行うために,新たに著名なEdmund Naumann 先生の名前を冠した「ナウマン賞」を創設しました.

3)「小藤文次郎賞」は,設立当初は速報性を持った短報のみを対象にした「小藤賞」という名前で設立されました.しかし,その後,重要な発見または独創的な発想を含む論文,すなわち学界に対するインパクトの高い論文に対して授ける賞として「小藤文次郎賞」が再定義されて,今日に至っています.その審査過程において,これまでは直近2 年間に発表された論文だけを対象としてきましたが,地質学分野は他分野(生物学や化学など)とは異なり,論文評価のためには2 年は短すぎ,評価が定まるまでには少なくとも5 年は必要と判断されます.そこで,今回の改正では,「小藤文次郎賞」審査期間を応募直前の5 年間に変更しました.

4)「地質学雑誌特別賞」(新設)は,これまで地質学雑誌に掲載された論説や総説以外の記事を表彰するために新たに用意されました.地質学雑誌には,原著論文および総説の他に,レター,ノート,報告,講座などの比較的短い著作が掲載されます.これらの中には,フルペーパーではないものの,重要な地質記載や有用性の高い研究手法等を提案したものも含まれます.それらについて,新たな賞を設けて表彰することにしました.

5)これまで,地質学研究を側方からサポートされた会員ならびに非会員の方々を対象に「功労賞」,「地質学会表彰」が選ばれてきました.かつては,大学において働かれた技官の方々,新技術の開発に貢献された会社の方々,また最近では中等教育の教科書出版や,テレビの教養番組作成チームなどが受賞対象となりました.このたび,新たに会員対象の「功績賞」を新設したことに伴い,主に非会員を対象とした賞として「地質学会表彰」と一括することにしました.ついては従来の「功労賞」は廃します.

6)若手の育成を目指して,学術大会の際に中高校生達のポスター展示をジュニアセッションとして開催し,優秀な発表の表彰をこれまで非公式に進めてきました.この度それを学会の正式な賞として「ジュニアセッション優秀賞」「ジュニアセッション奨励賞」を用意しました.

なお,今回の規則改正では,既存の「小澤儀明賞」と「柵山雅則賞」の対象年齢を,従来の37 歳以下から,博士号取得後5 年以内に変更し,さらに「研究奨励賞」の対象年齢も,従来の35 歳未満から,32 歳未満に変更しました.「小澤賞」「柵山賞」の年齢制限を生物学的年齢から学位取得後5年とした理由は,大学入学時の年齢のばらつきに起因する不平等をなくすことにあり,欧米でもしばしば用いられている基準です.ただし今回の対象年齢の変更により特定の年齢の会員に不利益が生じないよう,移行期間を設けることにしました.したがって上記の対象年齢の変更は,1 年遅らせて来年度募集の表彰から適用することにします.

以上の賞体系の変更の意図は,あくまで多様な会員層に対して満遍なく表彰対象となっていただくためです.この度の変更が,多数の会員にとって,さらに地質学研究を推進するブースターになることを大いに期待しております.こぞってご応募いただければ幸いです.