Vol. 22  Issue 4 (December)

 

通常論文

[Research Articles]

1. Geochemistry of eclogite- and blueschist-facies rocks from the Bantimala Complex, South Sulawesi, Indonesia: Protolith origin and tectonic setting
Adi Maulana, Andrew G. Christy, David J. Ellis, Akira Imai, Koichiro Watanabe

インドネシア,南スラウェシ,バンティマラ複合岩体のエクロジャイト相および青色片岩相変成岩類の地球化学的研究:源岩の起源およびテクトニックセッティング
Adi Maulana・Andrew G. Christy・David J. Ellis・今井 亮・渡辺公一郎


インドネシア,バンティマラ複合岩体のエクロジャイト相および青色片岩相変成岩類の全岩の主成分元素および微量元素組成を初めて報告した.微量元素組成は,エクロジャイトの源岩がE-MORB,N-MORBおよび斑糲岩質集積岩であったことを示唆する.青色片岩の源岩はより多様であり,N-MORB,大洋島玄武岩(OIB),島弧玄武岩(IAB)を含む.MORBに由来する試料は1試料を除いてエクロジャイト相の環境に到達したが,より厚い地殻(OIB, IAB)に由来すると推定される試料は,沈み込んだ深度が浅かった(青色片岩相)ことが特筆される.本研究により,後期ジュラ紀のスンダランドの東南縁辺部の下に沈み込んだ海洋底の多様性が明らかにされた.
 
Key Words: Bantimala, blueschist, eclogite, geochemistry, Indonesia, Sulawesi.
 

2. Geodynamic evolution of a forearc rift in the southernmost Mariana Arc
Julia M. Ribeiro, Robert J. Stern, Fernando Martinez, Osamu Ishizuka, Susan G. Merle, Katherine Kelley, Elizabeth Y. Anthony, Minghua Ren, Yasuhiko Ohara, Mark Reagan, Guillaume Girard and Sherman Bloomer

マリアナ弧南端部前弧リフトの地質構造発達史
Julia M. Ribeiro
Robert J. SternFernando Martinez石塚 治Susan G. MerleKatherine KelleyElizabeth Y. AnthonyMinghua Ren小原泰彦Mark ReaganGuillaume GirardSherman Bloomer

マリアナ弧南端部は,新第三紀後半にはマリアナトラフの拡大により伸張場におかれ,3.7-2.7 Maには玄武岩マグマが活動した.現在この地域,すなわち南東マリアナ前弧リフト(SEMFR)は,浅いスラブ上の水和した前弧リソスフェアにのる伸張場である.前弧域では通常マグマは生産されにくいと考えられるが,SEMFRでは海底拡大に伴い,島弧や背弧海盆にみられるマグマに類似する化学的特徴を持つマグマが,広く活動したことが明らかになった.このマグマは,スラブ由来の流体が付加された枯渇したマントルの減圧融解により,高い部分溶融度で深さ23 ± 6.6 km,1239 ± 40°C程度で生産されたと見積もられる.現在SFMERでは非マグマ的な構造運動が継続している.
 
Key Words: forearc rift, Mariana arc, seafloor spreading, subduction zone.
 

3. Detrital anisotropic grandite garnet as an indicator of denudation level of Permian volcanic arc in the provenance of the South Kitakami Belt, Northeast Japan
Makoto Takeuchi

東北日本,南部北上帯の後背地のペルム紀火山弧の削剥レベル指標としての光学的異方性を示す砕屑性グランダイト
竹内 誠


南部北上帯の中部ペルム系〜上部三畳系中の砕屑性ザクロ石はほとんどがグランダイトからなり,そのうち光学的異方性を示すものの割合は,ペルム紀〜中期三畳紀において増加し,後期三畳紀にかけて減少する.これらのグランダイトはスカルン起源のものと推定される.スカルンの発達では,初期のマグマの貫入による接触変成作用で岩体の周囲広範囲で光学的等方性のグランダイトが形成され,中期の岩体冷却時や後期の熱水期で貫入岩体の近傍で割れ目などに沿って光学的異方性を示すグランダイトが形成される.光学的異方性を示す砕屑性グランダイトの増減は,このようなスカルンを伴う火山弧の累進的削剥を示している.光学的異方性を示すグランダイトの割合から火山弧の削剥量を見積もる方法は,東アジアのペルム紀古地理や地殻変動を明らかにする上で役立つものである.
 
Key Words: grandite, oscillatory zoning, Permian, sandstone, sector twinning, skarn, Triassic, uplift, volcanic arc.
 

4. U–Pb zircon age from the radiolarian-bearing Hitoegane Formation in the Hida Gaien Belt, Japan
Manchuk Nuramkhaan, Toshiyuki Kurihara, Kazuhiro Tsukada, Yoshikazu Kochi, Hokuto Obara, Tatsuya Fujimoto, Yuji Orihashi and Koshi Yamamoto

飛騨外縁帯一重ヶ根層の含放散虫珪長質凝灰岩から得られたU-Pbジルコン年代について
Manchuk Nuramkhaan
栗原敏之束田和弘高地吉一小原北士藤本辰弥折橋裕二山本鋼志

シルルーデボン紀の放散虫年代については,まだ未確定の部分が多い.その点において,放散虫化石を含む珪長質凝灰岩中のジルコン同位体年代は,放散虫化石年代決定の上で,きわめて有効なツールとなる.著者らは,飛騨外縁帯一重ヶ根層のPseudospongoprunum tauversiFutobari solidus–Zadrappolus tenuis群集の境界に挟まれる珪長質凝灰岩層のジルコンについて,LA-ICP-MSを用いて年代測定を行った.その結果,426.6 ± 3.7 Maの年代値が得られ,両群集の境界はLudlowian 〜 Pridolianであることが明らかとなった.F. solidus–Z. tenuis群集の年代の上限については,408.9 ± 7.6 MaのジルコンSHRIMP年代が過去に黒瀬川帯より報告されているため,同群集のレンジはLudlowianもしくはPridolian 〜 Pragianである.
本結果は,一重ヶ根層の放散虫化石年代だけではなく,福地ー一重ヶ根地域全体のオルドビス〜ペルム紀の層序・古環境変遷復元にも大きく貢献する.オルドビスーシルル紀に活発であった苦鉄質〜珪長質火山活動は,前期デボン紀に次第にtropical lagoonに変化した.そして静穏なラグーン環境は,中期ペルム紀に再び苦鉄質火山活動の場に変化した.
 
Key Words: radiolarian biostratigraphy, Silurian, U–Pb LA-ICP-MS age.
 

5. New SHRIMP U–Pb zircon ages of granitic rocks in the Hida Belt, Japan: Implications for tectonic correlation with Jiamushi massif
Xilin Zhao, Jianren Mao, Haimin Ye, Kai Liu and Yutaka Takahashi

飛騨花崗岩類の新たなSHRIMPジルコンU-Pb年代:飛騨帯とJiamushi地塊との地質構造的関連
Xilin Zhao・Jianren Mao・Haimin Ye・Kai Liu・高橋 浩


飛騨帯の花崗岩類は古期及び新期花崗岩類に区分されており,立山地域の試料についてSHRIMPを用いてジルコンU-Pb年代を測定した.古期花崗岩(片麻状花崗岩)2試料は245±2及び248±5 Maを示し,新期花崗岩は197±3 Maを示した.また,珪長質片麻岩は330±6 Ma,243±8 Ma及び220 Maを示し,それらはそれぞれ,飛騨古期変成作用,古期花崗岩の貫入及びマイロナイト化作用の時期を示す.これらの年代,構成岩石,Sr-Nd同位体の性格から,飛騨帯は中央アジア造山帯東縁に位置するJiamushi地塊から分離したものと考えられる.
 
Key Words: Central Asian Orogenic Belt, Hida Belt, Jiamushi massif, SHRIMP U–Pb zircon dating.
 

6. Chronological and paleoceanographic constraints of Miocene to Pliocene ‘mud sea’ in the Ryukyu Islands (southwestern Japan) based on calcareous nannofossil assemblages
Ryo Imai, Tokiyuki Sato and Yasufumi Iryu

石灰質ナンノ化石群集に基づく中新世〜鮮新世の琉球列島‘泥海(島尻層群)’の年代層序学的・古海洋学的復元
今井 遼・佐藤時幸・井龍康文


琉球列島沖縄本島には,中新統〜更新統の島尻層群,更新統の知念層および琉球層群が分布する.島尻層群は主に泥岩と砂岩からなり,琉球層群は礁成石灰岩からなる.また知念層は,島尻層群と琉球層群との中間的な岩相を示す.この「泥海(島尻層群)」から「サンゴ海(琉球層群)」への岩相変化は,琉球列島の背弧海盆すなわち沖縄トラフの形成により,黒潮が背弧側へ流入したことに関連していると考えられている.我々は,沖縄本島南部で掘削された「南城R1(堀止深度2119.49 m)」の試料を用いて,島尻層群(豊見城層・与那原層)の石灰質ナンノ化石生層序の確立と石灰質ナンノ化石群集解析と岩相層序に基づいた後期中新世から後期鮮新世の古海洋環境復元を目的に研究を行った.その結果,4つの化石基準面が認定され,豊見城層は上部中新統(NN11〜NN12;CN9a〜CN10a–CN10b)に,与那原層は上部中新統から上部鮮新統(NN12〜NN16;CN10a–CN10b〜CN12)に対比されることが判明した.豊見城層および与那原層下部堆積時(>8.3〜5.3 Ma)は,低いコッコリス生産量とSphenolithus abiesの多産から,貧栄養環境であったと推定される.与那原層中部堆積時(5.3〜3.5 Ma)は,コッコリス生産量の増加およびsmall Reticulofenestra spp. の多産から,富栄養環境への変化が想定される.与那原層上部堆積時(3.5〜>2.9 Ma)は石灰質ナンノ化石の産出頻度が低いことより,再び貧栄養環境へ戻ったと考えられる.島尻層群の堆積相および底生有孔虫に関する先行研究の結果を併せて考察すると,以上の海洋環境の変化は堆積盆地の浅海化に起因すると結論される.
 
Key Words: biostratigraphy, calcareous nannofossil, Miocene, paleoceanography, Pliocene, Ryukyu Islands, Shimajiri Group.
 

[Review Articles]

7. Origins of Birimian (ca 2.2 Ga) mafic magmatism and the Paleoproterozoic ‘greenstone belt’ metallogeny: a review
Frank K. Nyame

約22億年前のBirimian苦鉄質火成活動の起源と古原生代の緑色岩帯の金属鉱床生成

古原生代の苦鉄質火成活動の記録が保存されている西アフリカ盾状地のBirimianは,従来,玄武岩質〜安山岩質の岩石が占めていると多くの研究者によって記述されてきた.しかしながら,この火成岩帯の起源や付随する鉱床の成因に特徴に関して,まだ議論が続いている.本総括論文では,関連する従来の研究を概括し,Birimianの高品質の金属鉱床(マンガン鉱床や金鉱床等)が苦鉄質岩類に伴って産出すること自体がその成因に示唆を持つことを提案する.
 
Key Words: Birimian, greenstone belt, metallogeny, West African Craton.
 

[Research Articles]

8. Late Triassic ammonoid Sirenites from the Sabudani Formation in Tokushima, Southwest Japan, and its biostratigraphic and paleobiogeographic implications
Yasuyuki Tsujino, Yasunari Shigeta, Haruyoshi Maeda, Toshifumi Komatsu and Nao Kusuhashi

徳島県木頭地域の寒谷層からの後期三畳紀アンモノイドSirenitesの産出とその生層序学的・古生物地理学的意義
辻野泰之・重田康成・前田晴良・小松俊文・楠橋 直


徳島県木頭地域に分布する寒谷層上部よりSirenites senticosusが発見された.この種は,後期三畳紀の前期カーニアン期後期の指標化石であるAustrotrachyceras austriacumと共産することが知られており,同地域の寒谷層上部は下部カーニアン階上部に対比できる.S. senticosusの分布は,主にテチス海を中心に知らており,日本の後期三畳紀アンモノイド類は,低緯度地域のテチス型動物群と類似性が高い.一方,日本の同時代の二枚貝類は,高緯度地域のボレアル型動物群と類似性があることがすでに指摘されている.この結果は,日本の後期三畳紀のアンモノイド類と二枚貝類の古生物地理的傾向が明らかに異なることを示している.
 
Key Words: ammonoid, Carnian, Kurosegawa Belt, Sabudani Formation, Sirenites senticosus, Southwest Japan, Tethyan affinities, Tokushima, Triassic.
 

 

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http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iar.2013.22.issue-4/issuetoc


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