地質マンガ

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エアロゾルってなになに?

研究船「みらい」に搭載しているエアロゾル研究のための装置.突き出た煙突のような部分からエアロゾルを吸い込み,フィルターでエアロゾルを回収する.

エアロゾルとは、簡単にいうと大気中を漂う“ちり”ですが、火山からの噴煙、工場の煙突や車のテールパイプから出てくる煙、たばこや焚き火の煙、ひいては空をただよう雲や霧、これらも全てエアロゾルです。この意外に身近なエアロゾルですが、地球の気候変動や海洋での微生物の活動に大きな関わりがあることが明らかになっています。

例えば、春の風物詩である「黄砂」現象。中国奥地の砂漠から砂が大気中に巻き上げられて、西風にのって“エアロゾル”として運ばれてきたもので、日本だけでなく、太平洋を越え遠くアメリカ大陸まで到達することが知られています。この黄砂“エアロゾル”は、海では不足がちな大切な栄養分を含んでおり、海の微生物にとって陸の恵みを海へ運んでくれる大切な“運送屋さん”です。またエアロゾルは地面に届く太陽光を遮るため、温室効果ガスとは逆に、地球の大気を“冷やす”作用があると言われています。例えば、雲が空を覆う曇の日、霧のかかった日(雲も霧も水滴状のエアロゾル)を想像してください。太陽の光が地面には届かず寒くなりますね。これと同じ事が、工場や車から出てくるエアロゾルが増えたため、地球全体でも起こっていることが明らかとなっています。また頻繁に観測される、南極や北極のオゾンホールですが、これも氷のエアロゾルが引き起こす特殊な化学反応が引き金となっています。

このように、エアロゾルは現在問題となっている地球環境の変動に大きく関わっており、地球環境の将来を考える上で最も重要な課題の1つです。そして、海洋大気観測船を使った広範囲にわたるエアロゾル観測は(今回の航海では地球半周分、MR08-06「みらい」による研究航海:首席,原田尚美)、陸上では得られない貴重なデータを私たちにもたらしてくれます。

 

古谷浩志・鄭進永(東京大学海洋研究所),川村喜一郎(財団法人深田地質研究所)