地学露頭紹介

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中央構造線活断層系 川上断層の露頭
窪田安打(応用地質)

露頭の場所:愛媛県西条市丹原町湯谷口・中山川河床
写真1 川上断層の露頭(2002年撮影).その後の河川浸食により,現在は露頭範囲が減少している.


概要:中央構造線( Median Tectonic Line: MTL)は西南日本の内帯と外帯を境する断層である.この中央構造線に平行に分布する活断層は中央構造線活断層系と呼ばれており,第四紀に右ずれ運動を生じている(岡田, 1972).愛媛県西条市丹原町湯谷口の中山川河床(北緯33度51分 21.66秒, 東経133度0 分45.81秒)には,中央構造線活断層系の川上断層がMTLより北側80 m付近に分布しており,両断層が連続露頭で観察できる貴重な露頭であるため,ここに紹介する.なお,本露頭は愛媛県指定天然記念物「衝上断層」に指定されているため,試料採取等の行為は許可が必要である

(1) 川上断層の露頭(写真1):上部白亜系和泉層群と鮮新統−中期更新統の岡村層相当の礫層(森野ほか, 2002)が断層 (N70 °–80°E 80°S–90°)で接しており,断層境界の南側には順に和泉層群起源の幅10 m程度の断層ガウジと幅70 m程度のカタクレーサイトが分布する.断層沿いの礫層には地層の引きずりや礫の長軸が断層面に平行にほぼ水平に配列する変形構造が認められる.断層境界から幅約3 mの断層ガウジには右ずれの複合面構造が認められるが,幅5 mより南側の範囲には左ずれ(北側上昇成分を伴う)の複合面構造が認められる.更に南側のカタクレーサイトには,和泉層群の引きずり褶曲や左ずれセンスのせん断面が発達する.このせん断面の一部には右ずれの変形が重複して発達する.以上の地質構造に基づくと,川上断層は左ずれ断層により幅広い破砕帯を形成した後,第四紀に右ずれ断層として活動したと考えられる(Kubota et al., 2020).

 
写真2 中央構造線の露頭(中山川の右岸側).
(2)中央構造線の露頭(写真2):本露頭のMTLは外帯の三波川結晶片岩類と内帯の和泉層群の境界断層(N80°W 35°N)である.境界には幅4-5 m程度の泥質片岩が著しく破砕されたカタクレーサイトが分布しており(Fig. 2のB, C),中期中新世の岩脈が貫入している.このカタクレーサイトには和泉層群の砂岩片も取り込まれており,両者が接触した関係で破砕されたことを示している(Fig. 2のB).このカタクレーサイトには,Top-to-the-Northの正断層を示す複合面構造が顕著に発達するが,更にNW-SE方向の軸を持つ褶曲構造が重複して分布する.研磨片・薄片の観察の結果,Top-to-the-Northの正断層後に,Top-to-the-SWの左ずれ逆断層が生じたことが判った.Kubota et al.(2020)は,断層ガウジの年代測定等により,両断層運動は和泉層群と三波川帯が接合した市之川フェーズ(59 Ma)と先砥部フェーズ(47-46 Ma)の運動であると示した.

文献
Kubota et al., 2020, Tectonics, 39, e2018TC005372.森野道夫ほか, 2002, 地質学雑誌, 108, -岡田篤正, 1972, 愛知県立大文学部論集, 23, 68-94.
2021.10.25掲載
 
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