地質学者に答えてもらおう 回答一覧

 

〜  これまでの質問と回答  〜 

 

Q:山形県西置賜郡飯豊町大字広河原字湯ノ沢に広河原温泉という間欠泉があり、湯船の真ん中から、間欠泉が絶え間なく吹き上げています(0〜3mぐらい)。この間欠泉の地下構造と、どのような作用により、間欠泉が噴き出すのでしょうか。

(神奈川県 小堀雄三さん)

間欠泉は地下水(温泉水)が噴出したり休んだりを繰り返す現象をいいます。間欠泉は、水蒸気を噴出する間欠沸騰泉と炭酸ガスを噴出する間欠泡沸泉とに大別されます(大沢編、「温泉科学の新展開」ナカニシヤ出版、2006)。 ともに、地下でガスの圧力が上昇し、割れ目やボーリング孔などを通じて一気に地表へ噴出し、噴出後に地下の圧力が大気と同じになると、活動は停止し,またガス圧の上昇が始まるというメカニズムです。前者は水蒸気の圧力で有り、後者は炭酸ガスによるものです。 我が国における間欠沸騰泉の例としては、宮城県鳴子町の吹上間欠泉、長野県諏訪市の諏訪間欠泉などがあります。45分間隔で噴出する世界的に有名な米国イエローストン国立公園の間欠泉も,これに含まれます。  間欠泡沸泉の例としては、島根県吉賀町の木部谷間欠泉や質問の中で述べられている山形県飯豊町の広川原間欠泉などがあります。  いずれの場合にも、ガスの圧力が上昇するためには一旦ガスが地下で貯留される必要があり,上部を栓シールするような地質構造が必要となります。 ご質問の間欠泉は炭酸ガスが噴出していることから、間欠泡沸騰泉と考えられます。このタイプの間欠泉は一般に炭酸泉であり、もともと地下深部では炭酸ガスが水中に溶け込んでおり、地表付近では圧力が低減するためにガスが出現します。これを脱ガスと呼んでいます。これはラムネのガラス玉を抜くと炭酸ガスの泡が吹き出る現象と同じです。島根県の木部谷(きべだに)間欠泉では正確に約25分間隔で噴出が起こり、噴出は約5分間継続し、最も活動的なときの水柱は約2m程度の高さまで到達します。 噴出する地下水の酸素水素同位体比や水質などの特性より、間歇泉にはわずかですが、地下深部からもたらされた涼み混んだスラブから放出された深部流体が混入している可能性が指摘されています。 間欠泉における地化学特性の時間変化から,噴出初期は地下浅部に浅層地下水が流入し,噴出し、噴出中期になると深部流体の寄与が最も大きい地下水が噴出する.そして,徐々に浅層地下水の流入が起こり始め,希釈された地下水が噴出すると考えられています. 噴出箇所には断層の分布が想定されており、粘土などがらなる断層破砕帯が、岩盤に蓋をして栓ようなの役割をしたために、炭酸ガスを含む地下水が一時地下に滞留し、脱ガスによりガスの圧力が高まり噴出したものと考えられます。(回答者匿名)

 

Q:  海洋プレートは、海嶺で上部マントルのかんらん岩を融かした玄武岩からなりますが、沈み込み帯でできる大陸プレートも花崗岩の下には玄武岩が存在するのでしょうか。

(茨城県 inakamon さん)

ユーラシア大陸や北米大陸などの大陸プレートは大まかに言うとケイ素やアルミニウムに富んだ花崗岩質の上部地殻と鉄やマグネシウムに富んだ玄武岩質の下部地殻から構成されていると考えられています。
このような玄武岩質の下部地殻はマントルで出来た玄武岩質マグマが大陸の底に繰り返し貫入して固まることで成長してきたとされています。でも玄武岩といっても大陸の厚さは平均して40 km程度ありますので、そういった深いところで玄武岩質マグマが固まるとハンレイ岩と呼ばれるような完晶質の深成岩や、それが高温・高圧下で鉱物種が変化した変成岩になります。またこのような玄武岩質下部地殻が部分的に融けることで大陸地殻の元となる花崗岩質マグマが出来るのですが、融け残った物質は玄武岩質、あるいはもっと鉄やマグネシウムに富んだ超苦鉄質岩と呼ばれるような岩石になります。
このように大陸プレートの下部は玄武岩質の深成岩・変成岩や花崗岩質マグマを作ったあとの融け残り岩などの多様な岩石から構成されている可能性が高いと考えられていますが、大陸の深いところを直接研究することは難しく不明な点も沢山あります。このため昔の大陸プレートの深い部分が上昇して現在の地表に露出している場所(南極など)で現在も精力的に研究が進められています。(回答者匿名)

 

Q: リップルマークとクロスラミナの違いを教えてください。

(埼玉県 かべちゃさん)

リップルマーク、クロスラミナ(斜交葉理)はどちらも水流や風などの流れによって形成される構造ですが、リップルマークは堆積物の表面(たとえば海底など)に見られる形態をあらわすのに対し、クロスラミナは堆積物の内部または断面に見られ、層理面に斜交する葉理のことを言います。リップルマークのうち、水流により形成されるものを日本語で漣痕と呼びます。(回答者匿名)

 

Q: 伊豆半島ではプレートの移動や衝突の証拠を見ることができるが、これとは逆にプレートが開く場所を見られるジオパークがある国は何処でしょうか。

(静岡県 ランチチさん)

プレートが開く場所を見られる国はアイスランドです。アイスランド島は大西洋中央海嶺にホットスポットが重複することで形成された島で、海嶺の延長の火成活動を陸上で見ることができる数少ない場所です。カトラ (Katla Geopark)とレイキャネス (Reykjanes Geopark) の2つのジオパークが世界ジオパークに登録されています。(山口飛鳥)

 

Q: 日本シームレス地質図を見ての疑問ですが、足利市を中心とし、渡良瀬川左岸、北東側に同心円上に地層が分布している様に見られるのですが、他を探しても同じ様な所は見当たりませんでした。長い時間をかけて約180度曲げられたということでしょうか?

(栃木県 gagiさん)

この付近の地層は1.7億年前くらい前に,海洋プレートの沈み込みによってできた「付加体」と呼ばれる複雑な地層です.同心円状ではなくて,足利市の方向に開いたU字状に見えますね.折れ曲がるのにかかった時間は1.7億年よりはるかに短く,地質学的には一瞬の時間で形成されたものでしょう.ただ人間から見るととても長い時間ですが.
地表でこのように折れ曲がってみえる構造を褶曲と言いますが,地層は表面だけではなく三次元で考える必要があります.立体的に考えてみてください.三次元的には同じ形態でも,どの部分が地表面になるかで,地質図に表される形は変わります.似たような地層の分布は岐阜県南部などにもあります.探してみてください.(斎藤 眞)

 

Q:   日本列島が沈没する可能性ってどのくらいですか?

(匿名希望)

地すべり、火山噴火、地震による沈降、隕石衝突などに伴って陸地の一部が海底に沈むことはあります。また、温暖化による海水準の汎世界的な上昇により、標高の低い土地が水没することもあります。しかし、それらを除けば、日本列島全体のような広範囲の陸地が数日〜数十年で短期間に海底に沈む地学現象は知られていませんし、力学的にも困難です。なので、小説や映画の「日本沈没」のように、「日本列島全体が、数日〜数十年で沈没する」という確率はほぼ「0」と言っていいと思います。数千万年〜数億年の時間スケールでは大陸は徐々に大きくなったり、逆に小さくなったりすると考えられており、さまざまな地質学的証拠から大陸の成長・消滅過程を読み解く研究もなされています。(山口飛鳥)

 

Q: 火山の本を読んでいたら、「火山灰を調べたら、どこの火山か分かる」というようなことが書いてありました。それは、どうして分かるのでしょうか。どんなちがいがあるのでしょうか。含まれる物がちがうのでしょうか。結晶の形や色などがちがうのでしょうか。見たことはありませんが、灰を顕微鏡などで見ると分かるのでしょうか。 

(富山県 匿名希望)

火山灰には、地下のマグマ(どろどろに融解した岩石)から晶出した結晶(鉱物)や、マグマのしぶきが空気中で冷えて固まった破片(火山ガラス)が含まれています。マグマの性質は火山ごとに異なり、また同じ火山でも噴火ごとに異なります。そこで、マグマの性質を反映する火山灰の色や組織、火山灰中に含まれる鉱物の種類や割合、火山ガラスの屈折率や化学組成などといった情報を抽出し、さまざまな地点の火山灰の情報をもとに作成されたカタログと比較することで、どこの火山でいつ噴火した火山灰なのかを知ることができます。

 

Q: (東京都多摩市)大栗川の宝蔵橋から上流の新堂橋付近にかけて、川底が青みがかった灰色の粘土のような地質となっており、そこには15×9mm程度の二枚貝の化石があります。この地質は何時頃のもので、何故そこに貝の化石があるのでしょうか。

(りんごさん) 

地域の地質に興味を持つ地元の方のご質問ということで,大変嬉しく思います.ご質問の地層は上総層群連光寺層といい,約150万年前に浅い海で堆積した砂や泥からなります.浅い海底に生きていた貝の化石やゴカイの仲間の住み跡が良く見られることで有名です.連光寺層は,多摩川の河原にもよく露出していますので,ご覧になられることをオススメします.専門的な内容については,産総研発行の5万分の1地質図幅「八王子」および「青梅」,また電子版の「地質図Navi(https://gbank.gsj.jp/geonavi/)」もご参照ください.今後とも,日本地質学 会を宜しくお願いいたします.(植木岳雪)

 

Q: ジュール・ベルヌの『海底二万マイル』を読んでいて、ギリシャの火山の描写で疑問を感じました。西暦69年に沈み、1866/2/13に現れたアフロッサ島(実在するか存じません)は、「島の形は丸く、直径300フィート、高さは30フィート。長石の破片のまざったガラス質の黒い溶岩」とありました。この火山は溶岩ドームで酸性岩だと思うのですが、SiO2が多いという記述からすると色は白っぽいのでは?この火山は火山岩でしょうか?それとも深成岩ですか?ギリシャの火山の特徴と、黒い理由についても教えて下さい。

(東京都 さゆみん) 

ジュール・ベルヌの『海底二万マイル』に出てくるギリシャの火山はサントリーニ火山だと考えられます。サントリーニ火山は約3600年前のミノア噴火で大量の軽石を放出、径7.5×11kmのカルデラを生じ、現在、サントリーニ島、ティラシア島、アスプロニシ島、ネア・カメニ島、パレア・カメニ島の5つの島からなります。三つの島(サントリーニ島、ティラシア島、アスプロニシ島、)は外輪山の残骸で、特に、サントリーニ島の高さ200-300 mのカルデラ壁とその上の白壁の家々はエーゲ海の著名な観光地の一つになっています。ネア・カメニとパレア・カメニの二島はカルデラの中にできた中央火口丘 (溶岩ドーム)です。ノーチラス号は「ネア・カメニとパレア・カメニとのあいだの水路にいる」と書かれています。これら二つの島はカルデラが形成されたあと、紀元前197年に海面上に出現し、最後の噴火は1950年です。1866-70年にネア・カメニの周辺で海底噴火が起こり、三箇所から溶岩を噴出しました。ジョージ、アフレッサというのはその内の二箇所の溶岩噴出口の名前のようです。新しい火口は溶岩流出により、ネア・カメニ島と合体したので、現在はこのような名前の島はありません。ネア・カメニとパレア・カメニはカメニ火山と呼ばれており、SiO2(シリカ)量が65%前後のデイサイト溶岩からできています。シリカ量の多い溶岩でも、ガラス質のものは黒色です。特に海底に噴出するデイサイトは黒いことが多いので、色からシリカ量を推定することはできません。(田村芳彦)

 

Q:  花崗岩(御影石)について 、私は彫刻家で彫刻の素材として、御影石を使用しているのですが、どれぐらいの期間で風化がはじまるのでしょうか。素材の限界を知りたいのです。web上では、半永久的と出てくるのですが、真砂土があるのでそんなことはないはずで、仕上げ方法にもよると思いますが、切り出した状態で、おおよそで、100年単位でもかまいませんので、風化のはじまり時期及び真砂土になるまでの期間をお教え下さい。

(東京都 彫刻家) 

花崗岩が、石材や外壁材として加工後、大気や雨水に触れる状態になれば、顕微鏡で見るスケールとはいえ、必ず風化が始まります。花崗岩は、鉱物の結晶(石英や長石、黒雲母など)が集合した緻密な岩石で、一見隙間がないように見えますが、顕微鏡で見ると、数ミクロン程度の隙間が必ずあります。そこから雨水がしみ込み、わずかずつですが、鉱物を溶かし始めます。これが風化の始まりです。時間が経つと、溶解によって隙間が広がり、そこに自然界では苔などの植物が付着・繁殖し、根から出される根酸などによってさらに溶解が促進されることになります。ご質問にある風化の速度についてですが、地質学的な調査事例として、年代の分かる墓石の風化や、埋没年代の分かる段丘礫の調査などがあります。墓石の研究から言えるのは、100年程度であれば墓石でも十分に形状は保つものの、ピカピカに磨いてあった表面の鉱物も、わずかに溶解され、肌触りがざらざらになってくるということです。
約30万年前の河岸段丘に含まれていた円礫の花崗岩は、その形状は保たれていますが、指で崩すことのできるいわゆる「くされ礫」となっていることが報告されています。つまりこれは「真砂」の状態です。約30万年かかって、ちょうど真砂になりきったのかどうかは分かりませんが、真砂になるには少なくとも100年単位ではなく、おそらく万年単位の時間が必要だと考えられます。
もちろん、風化する速さは水の量に大きく左右されますので、乾燥地域(状態)ほど遅くなります。また、同じ約30万年前の河岸段丘に含まれている砂岩礫では、表面が褐色になっているものの、くされ礫という状態にはなっていません。つまり、岩石の種類によっても風化の速度が異なることがわかります。

 

Q:「造陸運動」とはどのようなものですか?

(兵庫県 Kさん) 

「造陸運動」
英語では,“epeirogeny”または“epirogenetic movement”といいます.19世紀末から20世紀初めに、世界中の山脈がどうやってできたかを議論しているときに出てきた理論です。
1890年にアメリカの地質学者G.K.ギルバートが初めて提唱し、1919年にはドイツの地質学者のH.シュティレが定義しなおしました。大陸のような広い地域が、地質構造の著しい変化なしに隆起したり沈降したりする地殻の運動のことです。ふつう、非常に長い時間をかけて徐々に起こる変動と考えられ、急激な造山運動とは区別され対立するものとされました。
つまり、造山運動を考えるときに、ゆっくりした運動を区別したものです。現在はこの考え方はほとんど使われていません。(日本地質学会会員 矢島道子)

 

Q:千葉県市原市田淵の白尾火山灰層は更新世前期、中期境界の国際模式地として認定されたのでしょうか?ゴールデンスパイクが打たれるのか話題になっていたようですが、その後のことがわかりません。教えて頂けますでしょうか。

(千葉県 どんぐりさん) 

下部ー中部更新統境界の国際模式地については、イタリアの2セクションと千葉セクション(市原市田淵)の計3セクションが模式地候補となっていますが、これまではどの候補地も決め手に欠き、結論が先送りされてきました。しかし先の国際層序委員会(ICS)において、その下部組織である第四紀層序委員会(SQS)が2015年(来年)中に結論の原案を作成することが決定されました。正式な模式地としての承認は、国際層序委員会における委員の投票(おそらく2016年開催の万国地質学会で行われる)で決まるので、委員に対して候補地の地層が模式地としてふさわしいという印象を持ってもらう必要があります。そのため各候補地に関係する研究者グループでは、国際層序委員会の委員を交えた形のシンポジウムや巡検(地層の見学旅行)を企画しています。日本でも来年秋に名古屋で開催される国際第四紀学会の時に、関連シンポジウムや千葉セクションの巡検を企画しており、関係する研究者グループが鋭意準備中です。もしこれらの活動が実を結び、晴れて模式地としての承認を受ければ、再来年には市原市田淵に日本で最初のゴールデンスパイクが打たれることでしょう。

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GSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point)は,国際層序委員会のワーキンググループやその上位委員会での何段階かの議論,投票を経て,最終決定する見込みです(2017年頃予定).(2015年11月追記)

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2015年夏に行われた国際第四紀学連合(INQUA)名古屋大会で、当初2015年秋であった申請書提出の締切が2016年末に延期され、さらに2016年8月に行われた万国地質学会で、2017年5月を申請書提出の締切とすることが決まりました。正式な模式地としての承認は、下部ー中部更新統境界作業部会(L-M boundary WG)、SQS、ICS、そして国際地質科学連合 (IUGS) における委員の投票(それぞれの段階で数ヶ月程度かかる)で決まるので、最終決定は早くても2018年中旬と目されます。現在各候補地に関係する研究者グループでは、申請書作成のための最終的な作業を行っています。(2016年10月11日追記)

 

Q:原発の活断層問題に関心があります。テフラによる地層の年代同定について、地質学の専門家が、以下のようなコメントをされていますが、
「例えば1mのローム層を10cm毎に連続サンプリングし、ある層準で3,000 個数えて斑晶鉱物が100 個有り、その上下で30 個、さらにその上下で10 個ということであれば説得力があると思います。しかし、1mのローム層のうち、ある層準だけに3,000 個数えて斑晶鉱物が1 個未満でその前後で検出できなければ、信頼性はかなり低いと言わざるを得ないと思います。」
ここで、「3000個数えて」と言っていますが、
(1)3000個とは何をどのようにとると考えれば良いのでしょうか?すなわち、地層には火山灰のみでなく、いろいろなものが堆積して形成されると思うのですが、それらを含めて定義しているのか、あるいは例えばある大きさのテフラ鉱物のみをスクリーニングしたものを取るのか等について教えてください。
(2)また、なぜ3000個に対して数十個以上の斑晶鉱物がなければ(特定?)テフラとして同定する上で信頼性が低いと考えておられるのでしょうか?
(3)また、専門家のコメントでは、
・テフラの降灰時期にピークがあるはず
・何十cmも積るはずである

とも読めるのですが、どう考えればよいのでしょうか?

(千葉県 片山 昇さん) 

※質問文頭の数字がそれぞれ回答文頭の数字に対応しています。
(1)まず,ご質問では専門家はローム層のことについて述べておりますが,ローム層は風成の堆積物で,日本の場合,火山灰や,その再堆積物,土壌等のちりなどからなっています.この場合は,ローム層のある特定の層準を検討した時に含まれる鉱物粒子全体のなかで,火山灰起源である斑晶鉱物のことを言っていると考えられます.
これが砂礫層の場合では,その場所が火山から遠く離れているなら,火山起源の鉱物はそれほど大きな粒径にはならないので,砂サイズの粒子だけふるいで集めて,その中で摩耗していないきれいな鉱物が火山灰起源と考えて数を数えていると思われます.特に,角閃石,輝石,β-石英は火山灰によく含まれ,周囲の岩盤中に含まれていないとすると,それらの内できれいな形をしているものを火山灰起源としてカウントしているのではないでしょうか.

(2)テフラを同定する上では通常,他の層準と比べて,区別できる程度の量の斑晶鉱物が含まれていないと,それがその時点で降ってきたテフラかどうか認定できません.肉眼で見て火山灰層であると確認できない場合,地層中に火山灰起源の鉱物がどのくらい混じっているかで,火山灰が降った層準かどうかを判断しますが,特に水中でたまった堆積物の場合には,火山灰起源の鉱物が再堆積して,幅広い層準に散らばってしまうことがあります.従って火山灰起源の鉱物が見つかったからといってその層準が降灰した時期とは限りません.個数は別にして,他の層準と区別できるだけの量が認められた時(ピークが有る時),テフラが存在する,あるいは降灰があったと認定できる可能性がでてきます.
ただし,注意しなければならない点として,複数の火山灰起源の鉱物が混じっていることがよくあります.その場合には,個々の鉱物の屈折率や化学組成を求めて,複数のグループに分けられるかどうか,そしてその各々のピークが別の層準にあるかどうかといったことで識別しますが,類似した特徴を持つ火山灰は多く,また組成にも幅があることから,識別は難しいのが普通です.有意な違いを見つけるためにはそれだけ多くの粒が必要になるのです.

(3)降灰時期のピークに関しては上述のとおりです.
何十cmがどのような場面で言われたのかよくわかりませんが,一般論として,周囲に例えば20cm厚のテフラがあれば,その地域もほぼ同様に降灰があったと考えられますが,それがその後の降水等によってどう流出し,どう残るかは別の問題だと考えられます.

 

Q:尼崎市は武庫川と猪名川に囲まれた沖積層平野ですが、通常、地形をご説明するとき「大阪湾に下る三角州上に立地」と述べています。先日『「三角州」とはあくまで広辞苑にもあるように「ほぼ三角形」の形状の土地を指すのであって、尼崎市の地形は「三角州」ではないのではないか』、というご指摘をいただきました。そこでご質問なのですが、地質学的に言って、尼崎市の地形は「三角州」に分類されるのでしょうか。

(兵庫県 あまっこさん)

ご質問にお答えします。尼崎市の地形は「三角州」に分類されます。

三角州という用語は,ナイル川の河口域が地中海に向かってギリシャ文字のデルタ(Δ)に似た形で突き出ていることから,紀元前5世紀にヘロドトスによって作られたと言われています。一般に三角州とは,河川からの活発な土砂の供給にともなって,沖合方向へ前進した堆積物の集合体(専門用語で「堆積体」と言います)で,周辺の海岸線に比べて沖合に突き出していることが最も大きな特徴です。一方,三角州の形は,河川から供給される土砂の供給量や粒度,さらに河口周辺で作用する波浪や潮流の強さなど,様々な要因によって変化することが知られています。したがって,三角州の中には,「ほぼ三角形」の形状を示さないものも多数認められています。例えば,メキシコ湾に注ぐミシシッピー川の河口域に形成された三角州は,鳥の趾のような形状を示すため,鳥足趾状三角州とよばれています。また,東京湾アクアラインの千葉県側の基点が設置されている小櫃川の河口域では,円弧状の形状を示す三角州が形成されています。

尼崎市が立地する沖積平野の海岸線を詳しく見てみますと,埋め立てなどの影響で多くの場所で海岸線の形状が人工的に改変されてはいますが,武庫川の河口域が周辺の海岸線に比べて大阪湾に向かって突き出していることが読み取れます。このような特徴から,尼崎市が立地する沖積平野が三角州として発達してきたことが理解されます。これまでの研究(Web版尼崎地域史事典「apedia」)で,武庫川は六甲山地を起源とする花こう岩質の砂礫を多量に運搬したために,河口域で三角州を発達させたと考えられています。これに対し,近隣の猪名川では,上流域に花こう岩が発達していないため土砂の供給量が少なく,河口域で三角州が発達しなかったと考えられています。このように,波浪や潮流の強さがほぼ一様な大阪湾に注ぐ河川の河口域を比べた場合,河川による土砂の供給量の違いによって,三角州が発達する場合としない場合のあることが理解されます。

 

花崗岩についてお尋ねします。庭に花崗岩の砂利が敷いてあります。原発事故の影響が気になって最近エアカウンターという線量計を買ったのですが、それで計測すると砂利の上の線量が0.08〜0.1くらい上がってしまいます。花崗岩にウランが含まれているというのは理解できたのですが、それがラドン・ポロニウムを放出し、呼吸によって内部被ばくするというのをきき、とても不安です。岩盤でなく砂利でもポロニウム等を放出しているのでしょうか。それはどれくらいの量なのでしょうか。

(愛知県 あかつきさん)

花崗岩にかぎらず、自然の岩石には極微量の放射性元素がもともと含まれているため、微量の放射線が出ています。この放射線のほとんどは岩石に含まれるカリウム、ウラン、トリウムから出されるもので、測定される放射線の強さはこれらの含有量によってほぼ見積もることができます。
例えば、愛知県で多く使われる三河地域の花崗岩には、カリウムが約5%、ウランが約1〜5ppm、トリウムが約10〜20ppm程度含まれています。この岩石の分布する場所での地表から1mの高さでの放射線量は約0.15マイクロシーベルト/hと見積もられ、線量計で測定される放射線の内訳はおよそ6割がカリウムによるもので、残りの1割がウランによるもの、3割がトリウムによるものと考えられます。

放射線量の6割以上を占めるカリウムの崩壊でできる元素は、カルシウム-40またはアルゴン-40でどちらも安定同位体で放射線は出しません。
ウランやトリウムがいくつもの段階を経て崩壊していく過程の一部に、ご質問にあったラドンやポロニウムが現れます。

ご質問のラドン・ポロニウムの生成量を大雑把に見積ってみます。
ウラン濃度5ppmの花崗岩1kgがあった場合、ここに含まれるウランの放射能の量は約60ベクレルなので、1年間に約20億個のウラン原子が崩壊すると見積もられます。ウランが放射平衡状態にあるとすれば、大雑把には、崩壊したウラン原子とほぼ同じ数のラドンが現れると見ることができます。仮に1年間にできるラドンを気体として全て集めたとすると、その体積は約7×10-14リットル(1リットルの700万分の1のさらに1億分の1)となり、非常にわずかな量であることが分かります。
ポロニウムは、ラドンが崩壊して生成される娘核種なので、現れる原子数は同じ程度です。実際には、ラドン222は半減期3.8日、ポロニウム218は半減期3.1分、ポロニウム210でも半減期138日で崩壊するため、このように1年分を集めることはできず、存在量はさらに小さなものになります。
また、花崗岩に含まれるウランの多くの部分は鉱物結晶の中に固定されており、崩壊で生じたラドンは、ほとんど結晶の中から動くことなく短期間に崩壊し生成される娘核種もその場に留まったままになると考えられますので、岩石の外へは殆んど放出されないと考えて良いでしょう。

花崗岩は自然の岩石の中では比較的放射線量の高い岩石ですが、庭に砂利として撒いても周辺への影響は無いと思われます。心配な点があるようでしたら、三河地域や岐阜には岩盤全てが花崗岩でできている地域が広がっていますので、そのような地域での昔からの生活状況などを確認されてはいかがでしょうか。
以下のページに自然の岩盤から見積もられる自然放射線量を地図に示していますので、地域ごとの岩盤から受ける放射線量の参考にしてみてください。
http://www.geosociety.jp/hazard/content0058.html

なお、インターネットなどで自治体等が報告している放射線量は、地上1m(胸の高さ)で測定した値である場合が多く、地面に測定器を置いて測定した値とは異なります。また、線量計の種類・特性によっても表示される値は大きく異なりますので、他の報告値と自分の測定値を比較する際には注意が必要です。

 

Q:滋賀県蒲生郡日野町鍵掛のシャクナゲを見に行きましたが、遊歩道沿いの岩肌が層状になっていてとても不思議でした。あたりには石灰岩地域に生育するイワカガミがたくさんありました。この岩はどういうものなのか教えていただけたら幸いです。

(奈良県 ちょびさん)

ご質問の岩石は,チャートではないでしょうか。
正確な位置がわかりませんが,滋賀県蒲生郡日野町鍵掛のシャクナゲ群落の付近には,チャートという岩石が分布しています。
チャートは堆積岩の一種で,二酸化珪素(SiO₂)を95%以上含んでおり,緻密で非常に硬く,割れ目は鋭いです。
層状,塊状,ノジュール状のものがありますが,この地域では層状のものがよく見られます。層状チャートは,放散虫など微生物の遺骸が大陸から遠く離れた深海底で堆積した遠洋性堆積物と考えられています。
((独)産業技術総合研究所,20万分の1日本シームレス地質図より)
岩肌が層状になっているとのことなので,ご質問の岩石はチャートではないかと思われます。

該当地域の地質については,20万分の1日本シームレス地質図のサイトもご参照ください。

 

Q:原子力発電所の活断層問題に関心があります。活断層が動いた場合、その近傍の地層が引きずられて動く(副断層)ことは素人でも想像がつくのですが、過去の活断層による地震の際、活断層からどの程度の距離では、どの程度副断層(岩盤まで届く)が出来、どの程度動いたことがあるのか、データはとられているのでしょうか?もし、整理されたデータがあれば、リンク先を教えてください。整理されたデータがなければ、例をいくつか教えてもらえないでしょうか?(ちなみに、原子力規制委員会では、活断層から1Km以内は何が起こるかわからないと言った議論が行われていました。)

(千葉県 片山 昇さん)

 地震断層で生じた断層帯の幅については,1)主断層の周辺に副断層が生じることによる幅の広がりと,2)主断層自体がステップしながら延びることによるステップ区間での幅の拡がり,の2つに分けて考える必要があります.そこで,断層帯の幅について,1)と2)について以下の資料を紹介させていただきます.

副断層でのずれの量については,主断層よりも小さいことは当然ですが,さまざまなケースがあり,幾つかの地震断層について詳しい調査もなされていますが一般化した論文は見かけません.

[資料1]
粟田泰夫(2007)2.1 地震断層の実測データ収集.H19年度原子力安全基盤研究「断層帯近傍における変形帯の幅に関する研究, p.4-18 http://www.atom-library.jnes.go.jp/H19_6_11.pdf

[解説]
1)主断層の周辺に副断層が生じることによる幅の広がりについて,カリフォルニア州の1992年Landers地震,1995年兵庫県南部地震,トルコの1999年Izmit地震の事例から,概ね数10m以下としています.(図2.1.1-1;図2.1.1-4,図2.1.1-5を参照して下さい.なお,地震断層のイメージを示した図2.1.1-8では,主断層が太い実線で示されています)
2)主断層自体がステップしながら延びることによるステップ区間(「ジョグ」と呼びます)での幅の拡がりについては,そのイメージが図2.1.1-8では網掛けの長方形で示されています.このジョグの中では,多くの副断層が生じています.図においてランク1とされる小さいものではジョグの幅が数10m程度ですが,ランク3の大きなジョグでは幅が数km以上に及ぶ例もあります.
なお,厳密に言いますと,1)の主断層の周辺に生じる副断層と,2)の小規模なジョグとされる断層とは,同じものを指す場合が少なくありません.

[資料2]
Lettis et al.(2002)Influence of Releasing Step-Overs on Surface Fault Rupture and FaultSegmentation: Examples from the 17 August 1999 I˙zmit Earthquake on the North Anatolian Fault, Turkey.Bulletin of the Seismological Society of America, vol.92, n0.1. p.19-42.

[解説]
主断層がステップすることによって生じるジョグの規模を,世界中の地震断層から抽出してまとめたデータが,表3と図10に掲載されています.ジョグは,a)地震断層の中間部に生じたもの,すなわち1回の地震による破壊が次々と飛び越えていったものと,b)地震断層の末端部に生じたもの,すなわち断層の破壊が伝わるのを止めた大規模なものとに,大きく2区分されています.(このイメージも,上記の資料1の図2.1.1-8を参考にして下さい)

a)地震断層の中間部に生じたジョグでは,最大で2-4kmまで断層帯の幅が拡がるとされています(図10の白丸).

b)地震断層の末端に生じたジョグでは,隣り合う別の地震断層の末端との間に2-10kmにも及ぶ大きな幅の断層帯が形成されます(図10の黒丸).ただし,このように大規模な末端部のジョグでは,多くの副断層が生じても,その分布密度は a)と比べて相対的に小さいとも考えられます.

 

Q:地質学の以下の4つの法則は、地質分野の中では一般的にオーソライズされているのでしょうか?
[1]地層累重の法則 [2]堆積初期の地層水平の法則 [3]堆積初期の地層連続の法則 [4]地層切断の法則
[1]は、私の周囲の大部分の方は認知しているのですが、[2]〜[4]はあまり聞いたことがないということでして、地質学の4つの法則としてオーソライズされているのか教えて頂けないでしょうか? 

(埼玉県 匿名希望さん)

お問い合わせの件は,斉一過程原理とあわせて地質学の古典的な基本原理と呼ばれるものです.これらは層位学の基礎となるものではありますが,必ずしも現在の堆積学の知識とは整合しないことは予めお含みください.陶山国男・羽田忍共著, ”現場技術者のためのやさしい地質学”築地書館刊に記載がありますのでご参照ください.

(a) 地層累重の法則
1791年にウイリアム・スミスによって提唱された層位学の基本法則であり,”地層は基本的に万有引力の法則に従って,下から上に向かって堆積する.下にあるものほど、古い.”という層位学の基本的な考え方であり,地層の新旧や年代判定を行う上での基本原理といえる.
広義の地層累重の法則は次の3つの法則からなる.
<第1法則>地層は水平に堆積する(初原地層水平堆積の法則.Law of original horizontality).
<第2法則>その堆積は側方に連続する(地層の側方連続の法則.Law of lateral continuity).
<第3法則>古い地層の上に新しい地層が累重する.

(b) 堆積初期の地層水平性の法則(=地層累重の法則の第1法則)
”水成の堆積物は、ほぼ水平に堆積し,しかも堆積する下の面に平行か、あるいは平行に近い層になって堆積する.”という趣旨.

(c) 堆積初期の地層連続の法則(=地層累重の法則の第2法則)
”水中で堆積した層は,それが作られたときには横のあらゆる方向に連続していて,その縁の方では,堆積作用が行われないために薄くなって消え去っているか,あるいは堆積盆地の周辺では古い地層や岩石に接して終焉している.”という趣旨.

(d) 地層切断の法則
”地層がその堆積した盆地の縁以外の地点で急に途切れている場合は,浸食によって削除されたか,断層等の構造運動によって移動された.”という趣旨.

(e) 斉一過程原理
ジェームズ・ハットンとチャールズ・ライエルによって導入された地質学古生物学の基本原理であり,"現在は過去の鍵である".すなわち、”現在私たちの身近に起こっている自然現象によって,大昔に作られた地層の生成を説明することができる”という趣旨.

 

Q:北海道の支笏火山のことですが、支笏火山の大噴火の時期について3万2千年前とする表記と4万年前とする表記の二つあり、身近では、2004〜2008年頃のものには3〜4万年前、2009年以降には4万年前が多いようです。統一されていますか?また、2009年の「第四紀下限の変更」と何か関係がありますか?

(北海道 EDOさん)

 現在の支笏湖を形成した噴火では大きく分けて支笏降下軽石堆積物(Spfa1)と支笏火砕流堆積物(Spfl)が噴出しました(勝井,1959;曾屋・佐藤,1980など).下位のSpfa1中にはしばしば炭化木が含まれることから,古くは1950年代から放射性炭素年代の測定対象となってきました.Spfa1に埋没した木はSpflの熱で炭化したと推定されるため,炭化木が形成されたのはカルデラ形成とほぼ同時と見ることができます.
 1980年代頃までにおこなわれた測定は測定限界が若く,3〜4万年前という測定値は検出限界に近い年代です。また,試料の化学洗浄法なども確立されておらず,現世の若い有機炭素が混入して若い年代が出ていた可能性もあります.
 1980年代後半以降は,加速器を利用した放射性炭素年代測定の手法が実用化され,精度が向上しました.その結果,ほぼ同じ場所の炭化木から4万年前前後の測定値が報告されるようになりました。しかし,それらの年代値も,現世の炭素の影響が完全に取り除かれていないためか,4万年前を中心として,その前後3千年ほどばらついているのが現状です.そのため,最近になって多くの人が4万年前頃という放射性炭素年代を支持するようになったという状況であり,2009年の「第四紀下限の変更」とは関係ありません.

(古川竜太 産業技術総合研究所)

 

Q:氷河期に関して。
氷河期と氷河期の間を間氷期と表現する記事と、温暖期と表現する記事を見ます。1)どちらが正しいのでしょうか?またその根拠は? 2)氷河期と間氷期の区別は? 氷河期が終わった、あるいは氷河期に入ったという判断は何を持ってそのようにしているのでしょうか?酸素同位体比は我々が日常使う温度表記ではなく相対温度になってしまいよく判らないのです。

(匿名希望さん)

 地球の歴史の中で,大陸に氷床が発達した時期を氷河期と呼びます.氷河期の中でも,相対的に寒冷で氷床が発達した時期を氷期,氷期と氷期の間の相対的に温暖で氷床があまり発達しなかった時期を間氷期と呼びます.一方,氷河期であるなしに関わらず,地球の歴史の中で相対的に気温や海水温が高かった時期は温暖期と呼ばれます.したがって,間氷期と温暖期は定義が異なります.まず,氷河期と氷期・間氷期に関して正しい定義を理解して下さい.
  氷床が発達した時期や場所は,陸上でみられる氷河成の地形や堆積物から分かります.現在では,地球の歴史では,4回の大きな氷河期があったとされています.それらは,先カンブリア時代古原生代および新原生代,オルドビス紀〜シルル紀,石炭紀〜ペルム紀,第四紀です.なかでも新原生代(クライオジェニアン紀)は地球の歴史で最も氷床が発達した時期で,地球は氷床に覆い尽くされたことが分かっています(全球凍結事変).
 かつて第四紀の氷期は,氷河成の地形や堆積物から識別されていました.有名なギュンツ氷期やミンデル氷期等の名称が,それに該当します.しかし,近年,有孔虫の殻の酸素同位体比が,氷床の発達と衰退に伴う海水の酸素同対比の変化を反映していることが分かり,
・北半球の高緯度域に氷床が形成・発達したのは,約260万年前からであること
・氷期・間氷期は約90万年前までは4万年周期で繰り返し,30万年間の移行期間を経たうえで,60万年以降は10万年周期で繰り返して来たこと
が明らかとなり,氷床の発達と衰退には,地球が太陽の周りを公転する際の軌道要素の周期的な変化が大きく関わっていると理解されています.

(井龍康文 東北大)

 

Q:過去の地球を知ることで私達社会にどのような利益をもたらすのですか?

(匿名希望さん)

 盛岡高等農林学校の大正5年の夏季地質調査実習に参加した宮澤賢治を含む学生たちの報告書には次のように書かれています(現代語に直してあります)。
 「地質学は、私たちが生活している地球の成り立ちを追求し、現在の地殻の構造を解明し、また地殻に起こるいろいろな変動について、その原因と結果を説明する。たとえば(子供に)我が家の歴史を教え、その成立と発展を理解させるようなもので、いやしくも知能をそなえたものに多大な興味を与えることは、論じるまでもなく明らかである」。
 あなたの先輩たちが見事に述べているように、過去の地球を知ることの利益は、まずこのように知能をそなえた人間として当然持っているはずの、自分たちが生活しているこの大地の構造や歴史への興味に解答を与えることです。つまり、まず「自分自身を知る」こと、「人間をつくる」ことに役立つと言えるでしょう。

 過去の地球を知ることだけで、私たち社会に直接利益をもたらすことは一般にはあまり知られていません。自然の風景(地形や地質)ができるストーリーは、過去の地球を知ることによってイメージが湧くものが多く、ジオパークなどで活用されています。
 しかし、もっと重要なことは、過去の地球から現在までの変化を知ることが、これからの地球の変化を予測するための基礎資料になることだと思います。また、過去に起こったことが理解できれば、現在起こっていることを理解する助けにもなります。例えば、地質に起因する自然災害(地震、火山、地すべりなどの斜面崩壊、液状化など)は、過去の歴史を知ることによって、今後どのようなことが起こるかを推測できます。温暖化・寒冷化などの気候変動も、過去からの変化を理解することによって、今後起こりうることの推測につながります。また、鉱産資源などは過去にできた地層・岩石の中にあるので、過去にどのような状況でできたかを知ることによって、鉱産資源の探査ができ、社会の役に立ちます。また、過去にどのような場所でできた地層か調べることは、その場所に建物を建てたり、人が住んだりして良いか?、どういう工法をとったらいいか?という判断の助けにもなります。
 まさに過去の地球をよく知ることによって、私たちが地球と共に生きていく重要な情報になるのです。
 過去の地球のことを研究した成果(例えば地質図など)が社会にどう役立っているか、について、以下のサイトに資料がありますので参考にしてはいかがでしょうか。

(独)産業技術総合研究所地質調査総合センターWeb
「地質図の利用」
http://www.gsj.jp/geology/geomap/geomap-use/

経済産業省Web
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0003843/004_haifu.html
の参考資料2 知的基盤の活用事例集p.100-119,p.120-145

(地質学会 斎藤 眞・石渡 明)

 

Q:地層は、様々なものが堆積して出来るということですが、どうしても分からない点があります。

上の図の、[1]が初めの状態だとしますと、それぞれ長い年月の間に各地点の土などが風雨によって運ばれ[2]のように別の場所へ移動します。1ヶ所だけみていますと、確かに積っていきそうですが、地球上満遍なくこれが起きると考えると一旦積った土などもまたどこかへ移動していかざるを得ず、堆積していかないように思えるのです。別の例えをしますと、山の土が削れてその周辺地帯に堆積するのは分かるのですが、地球全体満遍なく起るのは、山のない平野もありますし、おかしい。その土はどこから来たのか?部分的なら分かりますが、地球上満遍なく起る点が分からないのです。

(千葉県 H.M.さん)

 山などが削られ、削られて運ばれた土砂が堆積して地層ができるというのが主な地層のでき方です。地球上には、削られやすい場所と堆積しやすい場所があり、今の瞬間を見れば地層のできる場所は堆積しやすい場所(湖や海などの凹地)に偏っています。このため、地球上満遍なく堆積が起きているという考えは正しくはありません。
 しかし、地球の時間のスケールで見た場合は異なります。
数万年単位で見ると、気候変動により海水面が上下して、平野が海になり堆積しやすい場所になったり、浅い海が陸になり削られやすい場所になったりします。
 さらに、数億年単位でみると、地球を覆うプレートの動きにより海底の堆積物が陸に持ち上げられたり、ヒマラヤなどの山脈が作られるような現象が起きたりするなど、削られやすい場所と堆積しやすい場所が大きく変化していきます。
現在地球上で見られる地層の様子は、このような長い地球の歴史を通じて起きた作用が足しあわされた結果なのです。